中国の思想家で儒教の祖・孔子を祭る「孔子廟(びょう)」がある敷地の使用料を那覇市が徴収しなかったことの是非が争われた裁判で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は24日、「特定の宗教を援助したと評価されてもやむを得ない」とし、無償で公有地を使わせるのは政教分離を定めた憲法に反するとの判決を出した。裁判官15人のうち14人の多数意見。1人は「合憲」とする反対意見を付けた。
戦前の反省を受け、国や自治体は宗教と結びついてはならないとする政教分離をめぐり、大法廷が違憲判決を出したのは3件目。これまで神社との関わりが問題になったが、儒教施設に関する判断は初めて。
裁判の対象になったのは、那覇市の松山公園にある「久米至聖(くめしせい)廟」。1335平方メートルの敷地に、孔子像を置く建物や儒学と沖縄の歴史を学べる施設などがある。一般社団法人「久米崇聖(そうせい)会」が2013年に建て、市が公益性を認めて敷地の使用料(年576万円)を免除したため、市民運動家の女性が政教分離に反すると市を訴えた。
大法廷は、孔子の霊を迎える年に1度の祭礼は宗教的意義を持ち、祭礼を行う目的で施設の建物が配置されていると指摘。儒教が宗教かどうかには言及せず、崇聖会が「祭礼の観光化」を拒む姿勢を示す閉鎖性や免除額の大きさを踏まえ、市が使用料を免除したのは「宗教的活動」に当たると判断した。
その上で使用料については、市に決めさせるべきだとした二審・福岡高裁那覇支部判決を破棄。「市に裁量はない」とし、全額を徴収すべきだとした一審・那覇地裁判決を確定させた。
訴訟をめぐっては、18年の那覇地裁判決、19年の福岡高裁那覇支部判決も違憲と判断。高裁が徴収額を示さなかったため、女性と市の双方が上告していた。
この日の判決は、今年2月に最高裁判事に就任した長嶺安政氏が審理に加わらず、前任の林景一氏が判断した。
那覇市の城間幹子市長は「判決文を読んで市として改善すべき点を検討して対応したい」とした。(阿部峻介)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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