8月5日、東京の日本武道館。田畑梨花(たはたりんか)(22)は、全日本空手道体重別選手権に臨んだ。ちょっとしたスキで勝敗が決まる、厳しくも繊細な武道である。
女子個人組手50キロ級。3~4人が総当たりのリーグ戦を戦い、それぞれの1位が準々決勝に進む。
リーグ戦で田畑は攻めた。突き、蹴りが決まる。ポイント数で圧倒した。
準々決勝までの間、田畑は空手をあきらめかけた「昔の自分」を思った。
兵庫県宝塚市に生まれた。5歳のとき、近所で体操をしているところがあると聞き、体験に行くと、そこは空手の道場だった。
空手が強い中高一貫の私立学校に入学し、高校で伸びた。クロアチアやカザフスタンの大会で優勝するなど、世界を転戦して勝利を重ね、18歳以下のポイント数で世界1位になった。
田畑は大学に進み、関西学生で優勝。世界のリーグで3位になった。世界一を狙える位置にまで来た。
ところが……。
2020年。コロナの感染拡大で、学生に外出禁止が命じられる。国内試合が中止になる。海外の試合に出場できず、ランキングのポイントが下がっていく。
焦る。家で蹴りを練習していたら、床を壊した。
そして大学4年生になった。コロナが落ち着いてきた22年秋、国内大会に出るが、成績が残せなかった。
〈孤独だ。もう限界や〉
翌23年1月、ギリシャで国…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment