大阪を代表する繁華街・ミナミに、フィリピン人住民らによる自助グループができて10年がたった。きっかけは、フィリピン人母子家庭で起きた無理心中事件。「孤立によって起きた事件を、二度とくり返さないために」と、地域住民も一緒に活動を続けている。
ミナミの真ん中にある大阪市立南小学校に9月11日、フィリピン人ら約20人が集まった。自助グループ「サウスイーストアジアコミュニティ」(SEAC)が企画した防災講習会。市職員から地震や津波時の避難のしかたや、準備すべき防災用品について話を聞いた。
フィリピン人女性のジョイさん(33)は今年に入り、知人に誘われてSEACの集まりに参加するようになった。「地震の話は知らないことも多くて勉強になった。子どもも一緒に集まれるのがうれしいし、困りごとがある時には助けてもらっています」と話す。
ジョイさんの住む中央区島之内地区はミナミの繁華街の東側にある。住民約6400人の32%(8月末)を外国籍者が占め、ミナミの飲食店で働くフィリピン人の家族が多く暮らす。
SEAC設立のきっかけは2012年4月、島之内に住む29歳のフィリピン人シングルマザーが2人の子と無理心中を図り、小学1年の長男が亡くなった事件だ。市などによると、母親は夜間の仕事と育児の両立に悩み、区のケースワーカーに相談していたという。
地域の民生委員を務める住職の鳥居弘昌(こうしょう)さん(62)は事件後、「相談できる場所がなければ、同じ事件が起きかねない」と考えた。ミナミで働く顔見知りのフィリピン人らに声をかけ、この年の夏に地元の盆踊り大会へ一緒に参加した。
それをきっかけに立ち上がったSEACには、これまで100人近いフィリピン人住民が参加した。定期的に相談会や健康診断会を開くほか、子連れで遠足に行ったり、南小学校で母国の踊りや文化を紹介したりと、つながりを深めてきた。
代表を務める平松マリアさん…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル