自宅で死産した双子の遺体を遺棄したとして、死体遺棄罪に問われたベトナム国籍の技能実習生の裁判で、弁護団が一般の意見を募集したところ、出産経験のある女性や宗教関係者らから計127通の意見書が寄せられた。弁護人は意見書を最高裁に提出し、改めて無罪を主張している。
起訴されたのはベトナム人技能実習生のレー・ティ・トゥイ・リン被告(23)。2020年11月15日、熊本県の自宅で双子を死産した。「妊娠がわかればベトナムに帰国させられる」と考えて職場の農園に妊娠を明かしておらず、病院の診察も受けないままの孤立出産だった。
被告は双子の遺体をタオルに包んで茶色の段ボール箱に入れ、子ども2人の名前やおわびの言葉などを書いた手紙を置き、4片のテープで封をした。さらに、この箱を別の白い段ボール箱に入れて9片のテープで封をし、自室の棚の上に置いた。
被告は翌16日に病院で死産を明かした。19日に死体遺棄容疑で熊本県警に逮捕され、その後、起訴された。
裁判で被告は、段ボール箱に入れた理由について「布団の上に転がっている状態ではかわいそうだと思い、箱に入れれば寒い思いをしないで済むと思った」などと説明した。
21年7月の一審・熊本地裁判決は懲役8カ月執行猶予3年とした。判決は「周りの人に出産や死産を告白し、助力を求めることができたはずだ」と指摘した。
今年1月の二審・福岡高裁判決は懲役3カ月執行猶予2年と、刑を軽くしたが、有罪は維持した。被告が妊娠出産を隠そうとしていたとして、二重で箱に入れたことで「遺体の発見を困難にした」と判断した。
被告は有罪判決を不服として最高裁に上告した。
主任弁護人の石黒大貴弁護士は「精神的にも肉体的にも追い詰められた妊産婦への想像力があまりに乏しく冷たい」と、妊娠出産に対する「司法の無理解」を批判する。
「必要なのは処罰ではなく、孤立出産が生じる背景の分析だ」として、一般から広く意見を募ったところ、127通の意見書が寄せられた。
そのうち、ほぼ半数が出産を経験した女性で、「絶対に納得できない」「孤立出産に追いやられてしまう全ての女性に関わる問題」などと指摘するものだった。
石黒弁護士は「被告は死産直後で、心身ともに疲れ切っていた。一、二審判決は『正常な埋葬をしなかった』ととらえたが、『母としてあるべき姿』を司法が押しつけているのではないか。孤立出産に陥る女性に重荷を背負わせるのか、慰めの言葉をもって迎えるのか。司法がどんな態度をとるのか、問われている」と話す。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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