入試シーズンが本格的に始まりました。コロナ禍の中で頑張っている受験生たちへ、校長たちからの言葉をお届けします。
校長から受験生へ:都立日比谷高校の武内彰さん
学びを止めないで!
コロナ禍の中で、我々も心がけた言葉ですが、この春、大学、高校、中学などへ進学する、すべての受験生にもそう言いたい。合格した後に学びを止めないで欲しい。新学期になって、たとえオンライン授業でも学ぶことをあきらめないで。学びは進学するためだけのものではないんです。
学びの本来の目的は人類貢献だと、いつも生徒に伝えています。社会に出て、自分の資質能力を発揮する。その中で、世のため人のために少しでも貢献することが、本当の「自己実現」です。そのためにいま学ぶのであり、だから学びはずっとつながっていく。
インプットしたことをはき出すだけでは、通用しない時代です。様々な知識や見方、考え方をもってクリエーティブな発想をする。新しい知や価値を築いてこそ、新しい時代に活躍する人間になれる。部活動や行事に力を注ぐことも自己実現につながります。人と一緒に生きていく、チームを組んで何かを成すには、部活動や行事で人間性を育むことが不可欠です。
心がけて欲しいのは、外に向けた思考を持つこと。自分の能力を高めたい、人から認められたい、経済的に恵まれたい……。これらはすべて、ベクトルが自分に向いている。そうではなく、自分の学びが、周囲にとって、社会にとって、世界にとって、何に役立つかを常に考えて欲しい。
日比谷高校で校長をして9年目ですが、入学した時から意識を高く持ってきた子は、進路も開けます。学んでいる学校が公立であれ私立であれ、敷かれたレールに乗っかるだけに終わらず、自ら意欲的に学問探究をしてみてください。
公立は人事異動がありますが、教師が変わっても質の高い教育ができるよう、様々な改革を進めてきました。「日比谷の国語」「日比谷の英語」「日比谷の数学」という「日比谷の学習指導」を確立させることに注力しています。
また、世界に目を向けるために、米国ボストンやニューヨークで充実した内容の研修をし、ニュージーランドや韓国の高校と姉妹校提携もしました。公立高校で学び、世界にも出ていって欲しいと思っています。
長期休校中は、いち早くオンライン授業を導入しました。緊急事態宣言下でも高3生だけを登校させ、大学入学共通テストが終わった今も、個別添削指導や医学部の面接指導をしています。塾に通えない子も、学校を頼りに食らいついてくれば、結果が出せる。どんな状況でも学びを止めないタフな生徒と教員が日比谷にはいます。
みなさんも、人類貢献に向けて次の学びへ進んでください。(聞き手・宮坂麻子)
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〈たけうち・あきら〉1961年、東京都生まれ。東京理科大学理学専攻科を修了後、都立高の物理教師に。大島南高教頭、西高副校長などを経て2012年より現職に就き、東大合格者数を公立高トップにした。バドミントン部顧問も務める。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル