高校でのテニス大会中、後ろの校舎にぶつかって大けがをした――。当時の選手が学校側を訴えた裁判で、「安全に配慮する義務を怠った」として賠償を命じる判決が出た。コートは公的団体の規格を満たしていたとされるが、それでも安全とは言えないのか。
裁判資料や関係者への取材によると、事故は2011年7月、東京都立高校のテニスコートで開かれた「都立対抗テニス大会」で起きた。
ボール追い、校舎に激突してけが
原告の男性は当時、別の学校から参加した。ダブルスの試合中にボールを追いかけた際、勢いあまって後ろの校舎のコンクリート壁に激突。前歯2本が抜ける大けがをし、救急搬送された。コート最後方のベースラインと校舎の距離は約6・6メートルだった。
男性は20年、学校が事故を予測できたのに対策を怠ったとして、都を相手取って提訴。治療費や慰謝料など計約1889万円の賠償を求めた。
都側は、ベースラインの後ろに6・4メートルの空間を確保するよう求める「日本体育施設協会」(当時)の規格を満たしたコートだったと反論した。中高生なら壁に気づけた上、過去に事故もなかったとも主張した。
規格は満たしていたが
しかし今年3月の東京地裁判決は、校舎は規格基準からわずか0・2メートル先に位置し、校舎の際にはコンクリート地面や排水溝のふたもあった点を重視。「テニス部の教員や公式大会の主催者なら、衝突は具体的に予見できた」と指摘した。そのうえで「学校にはコートの使用を避けるか、少なくとも壁に防護マットを置くべき注意義務があった」と判断し、都に約423万円の支払いを命じた。
都も、賠償額を不服とする男性も控訴している。
一見、学校側に厳しく見える判決だが、専門家はどう見るか。
専門家はこの判決をどう評価するでしょうか。部活中の事故をめぐる過去の裁判の歴史も踏まえて解説してもらいました。
安全めぐる判決に歴史
「学校管理下では、ただ規格…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル