集団的自衛権の限定行使を可能にする安全保障関連法が成立してから19日で5年になった。安保関連法は菅義偉首相が安倍晋三前首相から引き継いだ大きな遺産だが、未処理となっている最大の課題が敵基地攻撃能力の取得だ。しかし、現在までのところ、首相の口から踏み込んだ発言は出ていない。 「弾道ミサイルなどの安全保障上の脅威、自然災害、海外在住の日本国民へのテロの危険などさまざまな緊急事態に迅速かつ適切に対処してきた」 首相は就任後に臨んだ16日の記者会見で、北朝鮮によるミサイル発射への対処を官房長官時代の実績として挙げた。だが、この中で敵基地攻撃能力に関する言及は一切なかった。 安倍氏は辞職直前の11日、敵基地攻撃能力を含む「ミサイル阻止」について、次の内閣で議論を深めるよう促す談話を発表している。首相自身も国家安全保障会議(NSC)の一員として談話のとりまとめに加わっているが、表向きは慎重な言い回しに終始している。 8日に行われた自民党総裁選候補者による共同記者会見でも、首相は「専守防衛の範囲の中で与党で議論している。議論を見据えながら対応していきたい」と述べるにとどめ、「敵基地攻撃能力」や「ミサイル阻止」といった言葉は使わなかった。 政府高官は敵基地攻撃をめぐる首相のスタンスについて「安倍氏と大きくは変わらないのではないか」と話す一方で、今後開かれるNSCでの首相の発言次第で検討のあり方も変わるとの見方を示す。首相は敵基地攻撃能力に慎重な公明党や支持母体の創価学会に太いパイプを持っており、落としどころを探っているとみられる。 安倍内閣では集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更や安保関連法をめぐり、首相は官房長官として果断な対応を安倍氏に促したとされる。首相となった今、どのような判断を下すのか。安倍氏の談話では年末までに結論を出すとしている。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース