全身14カ所の骨折に8カ月にわたる入院、10年近くに及んだ心の病との闘い。JR宝塚線(福知山線)脱線事故の発生から25日で15年。「生きていることの価値」を見失った女性が絶望を抜け出したどり着いたのは、「生きていることが価値」という確信だった。
「みなさん、安全の本質は何だと思いますか」
浅野千通子(ちづこ)さん(41)=兵庫県宝塚市=は1月、大阪市内で約100人のJR西日本社員に問いかけた。同社員に体験を語るのは初めて。2時間を超えた話をこう締めくくった。
「事故をまた起こしたら大変なことになるという『恐怖』ではなく、自分の車に乗せている子どもの命を守りたいというような『愛』をベースに安全を考えてほしい」
15年前の4月25日は大阪の勤め先に向かっていた。乗っていたのは2両目。線路脇のマンションに衝突して「く」の字に曲がり、最も多くの死者が出た車両だ。衝撃で骨盤は割れ、左足は開放骨折。「マグマの中に浸(つか)っているような」激痛に襲われた。
3年間で9回の手術を受け、リハビリに励んだ。杖を手放し、小走りができるようにもなったが、見て見ぬふりをしていた心の傷が開いた。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症し、重いうつ病になった。
「1秒1秒、生きているのが苦…
月980円で有料会員限定記事を読めるお得なシンプルコースのお申し込みはこちら
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル