完全復活か、さらなる進化か。トップ棋士との対戦ばかりの中で、渡辺明二冠(35)は昨年度40勝10敗、勝率.800というずば抜けた成績を残した。その前年度、2017年度が21勝27敗、勝率.438とプロ入り後初めて勝率5割を切ったことから考えれば、別人のような数字だ。勢いのある若手棋士からも「強すぎる」と声があがるほど、今の渡辺二冠は仕上がっている。
8つあるタイトルのうち、複数を保持しているのは三冠の豊島将之名人(王位、棋聖、29)と、渡辺二冠(棋王、王将)の2人だけ。現在、棋聖戦五番勝負で、この2人が直接対決し、まさに現在の将棋界の頂上決戦ともいうべき戦いが繰り広げられている。7連覇を果たした棋王の就位式では、タイトルホルダー最年長という点を意識し、台頭する若手たちの壁となる意気込みを語った。「鬼の棲家」と称される順位戦B級1組で全勝、A級復帰を果たし、棋王7連覇に王将位も奪取。分厚く高い壁となっていることは間違いない。
超早指し棋戦、AbemaTVトーナメントは第1回大会では解説を務め、今回の第2回大会が初出場。目標を聞かれ「1勝」と答え、「こんなもんだと思うんですよね。今回の自分の期待値は」とかなり低めに見積もった。前回優勝の藤井聡太七段(16)とともに、本戦から出場するシード棋士だが、タイトル通算22期の実績と、現在の絶好調ぶりを考えれば、優勝候補の筆頭と言ってもいいレベルだ。対戦相手が前回準優勝の佐々木勇気七段(24)とあって「(自信は)ないです。すごく嫌な相手を引いたなとは思いました」ときっぱり答えたが、本人が控えめに答えるほど、周囲からすれば威圧感が増す。
藤井七段は史上5人目の中学生棋士としてデビューしたが、4人目は渡辺二冠。その前が羽生善治九段(48)。間違いなく将棋史に残る天才の一人が、羽生九段の着想から生まれた超早指し棋戦でも躍動する。
◆AbemaTVトーナメント 将棋界で初めて7つのタイトルで永世称号の資格を得る「永世七冠」を達成した羽生善治九段の着想から生まれた、独自のルールで行われる超早指しによるトーナメント戦。持ち時間は各5分で、1手指すごとに5秒が加算される。羽生九段が趣味とするチェスの「フィッシャールール」がベースになっている。1回の顔合わせで先に2勝した方が勝ち上がる三番勝負。予選A~Cブロック(各4人)は、三番勝負を2回制した棋士2人が、本戦への出場権を手にする。本戦トーナメントは8人で行われ、前回優勝者の藤井聡太七段、タイトルホルダーとして渡辺明二冠がシードとなっている。
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