菅義偉(すが・よしひで)首相は就任後10日で中国の習近平国家主席と電話会談を行った。就任のあいさつをかわす儀礼的なものだが、中国の国家主席が日本の首相に就任の祝意を伝えるのは初めてだ。 安倍晋三前首相は平成24年12月に政権に返り咲いたものの、胡錦濤国家主席(当時)との会談は実現しなかった。翌年3月に習氏が国家主席に就いた際も同様で、安倍、習両氏の接触はこの年9月が初めてだった。 安倍政権の7年9カ月で少なくとも首脳同士の交流が行える状態にはなった。一方で、安倍政権は日米豪印4カ国の安全保障協力を強化し、中国に対峙(たいじ)するネットワークも形成した。 菅首相も習氏と会談する前に米国、オーストラリア、インドの3カ国首脳との電話会談を済ませた。25日の会談では習氏に対し、「東シナ海情勢」について懸念を表明。同席した坂井学官房副長官は尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での中国による挑発行為が念頭にあったと説明した。 ただ、首相は安倍政権内で中国との経済関係を重視する立場をとってきた。12日の自民党総裁選候補者討論会では「反中包囲網」に反対する考えも示した。 日中両国の当面の焦点は、延期となった習氏の国賓来日だ。尖閣諸島周辺での挑発行為や香港の人権問題を理由として、自民党外交部会は国賓来日の中止を要求している。首相は25日の会談後、記者団から聞かれていない国賓来日に言及して「やり取りはなかった」と説明した。 首相は国賓来日について「具体的な日程調整を行う段階ではない」と繰り返してきた。安倍政権から続く姿勢だが、国賓来日を宙に浮いたままの状態に保つことが「対中カード」になるとの見方もある。 外務省幹部は「中国にとって国賓来日は習氏が正式に了承した行事だ。中止となれば習氏の判断が間違っていたということになる」と話す。来日の可否が明確になるまでは、日本が中国の軍事行動や人権問題などを批判しても過激に反発することもないと見る。 だが、尖閣諸島周辺では中国公船の航行が連続100日を超えるなど中国の挑発はエスカレートしている。日本を射程に収める中距離ミサイルの配備も進む。儀礼的な「友好」の裏で菅政権には、中国の脅威を見据えた着実な防衛力強化が求められている。(杉本康士、石鍋圭)
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