清水優志
利用者の減少に悩むJR木次線の沿線自治体が、路線存続のための取り組みを打ち出している。JR西日本が赤字路線の廃止に言及する中、運賃の補助や定期利用のモニター調査など、あの手この手で乗客の増加を目指す。
4月30日、島根県雲南市木次町の木次駅前で、同市の石飛厚志市長が鉄道利用をPRするチラシを配布した。あいにくの雨で受け取る人もまばらだったが、石飛市長は報道陣に「木次線は地域を支えている。(2018年3月に運行を終えた)三江線の次になってはならない」と言葉に力を込めた。
宍道(松江市)―備後落合(広島県庄原市)の約82キロを結ぶJR木次線。1日1キロあたりの平均利用者数(輸送密度)は、1987年度に663人だったが、少子高齢化やマイカー利用の増加の影響で、2019年度には190人まで減少した。19年度の旅客運輸収入は約6200万円で、JR西管内の51路線中、下から3番目だった。コロナ禍で鉄道事業者の経営が悪化する中、JR西日本の長谷川一明社長は2月の定例会見で「ローカル線の維持が非常に難しくなっている」と発言。赤字路線の存廃問題について、沿線自治体と協議する考えを示した。
「地元の足」存続への危機感から、沿線の松江市、雲南市、奥出雲町、広島県庄原市などでつくる木次線利活用推進協議会は、利用者増の取り組みを進めることにし、県や4市町で21年度、例年の10倍近い約2800万円の予算を計上した。
観光客を増やすため、4月から島根県民を対象に、5人以上の団体で乗車した場合のJR運賃と貸し切りバスなどの運賃の半額(上限10万円)を補助。
さらに利用者の掘り起こしを目指し、新たに木次線に乗って通勤・通院する人を対象に1カ月分の定期券代か、11枚つづりの回数券代を負担する。アンケートも実施し、課題を分析する。ただ、4月27日現在の新たな利用者は通勤利用のわずか1人にとどまり、制度の周知に苦慮している。
4月から協議会の会長を務める石飛市長は「観光だけでなく、通勤・通学も含めた新しい利用方法を見つけて欲しい。木次線を守るため、地域の姿勢を示していきたい」と話した。(清水優志)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル