新型コロナウイルスの検査について、4月11日の参議院予算委員会で、立憲民主党幹事長の福山哲郎議員が行った参考人質疑に、医療関係者らから猛烈な批判が起こっている。
参考人として出席した政府の専門家会議の尾身茂副座長に、実際の感染者数がどれほどいるのか詰め寄る内容だ。
Twitterでは、「尾身先生の回答は適切」「専門家の意見を理解できていない」「専門家に話を聞く態度ではない」と批判のツイートが相次ぎ、ハッシュタグ「#福山哲郎議員に抗議します」は36万件以上つぶやかれ、一時、トレンド1位になった。
後から、「#尾身先生を応援しよう」とするハッシュタグも現れ、こちらも5万3000件以上つぶやかれている。
福山議員が求めた「実際の感染者数」は全世界、どこでもつかみようがない。また、福山議員が提案した「無症状者・軽症者」も含めてのPCR検査は本当に必要なのか。
BuzzFeed Japan Medicalは、米国国立研究機関博士研究員でウイルス学、免疫学を専門とする医師、峰宗太郎氏の協力を得て、福山議員の質疑内容を検証した。
【BuzzFeed Japan Medical / 岩永直子】
「日本で陽性者は10倍いるのか?」
まず、質疑内容を振り返る。
尾身副座長は5月4日の専門家会議の記者会見で、「日本ではPCRで捕捉できない無症状の感染者も含めると10倍以上いると推測できる」という指摘に、「当初から軽症者や無症状者が多くて、我々の今のシステムでは探知できないということはおっしゃる通りです」と答えた。
福山氏はこの発言を取り上げて、質問した。
「『今の方法ではやるべき人が検査をやれていないという人がおられますよね』と答えている。陽性者の10倍、日本全体で無症状・軽症の人も含めて10万人程度いるという認識ですか?」
これに対して、尾身副座長は、「10倍ということについて『おっしゃる通り』と言ったわけではない」とした上で、こう回答した。
「10倍か15倍か20倍かというのは今の段階では誰にもわかりません」
「報告された感染者が全てを捕捉しているわけではないというのはおっしゃる通りというのは、この感染症の特徴からして、そういうことだと申し上げました」
また、福山議員は、厚生労働省クラスター班の西浦博・北海道大学教授も、実態は10倍以上いるかもしれないと会見で述べたことに触れた上で、「日本の場合には残念ながら軽症の方や無症状は相談者・接触者外来(帰国者・接触者外来)で弾かれてほとんど検査されていません」と批判。
その上で、「でも世界中はこの感染者の数には軽症者・無症状者の方が含まれています。なぜならこの人たちが感染を広げるからです」との認識を示した。
さらに、「今、抗体(検査)をやっています。大阪で抗体検査(の陽性率は)1%、神戸3%、東京6~8。ということはこのパーセンテージに入れていけば、少なくとも10万人じゃ下らないということです」と抗体検査(※)での疫学調査に話を移し、こう述べた。
※感染者の体内にできてウイルスを攻撃する「抗体」の有無を調べる検査。陽性なら、感染した経験があるとわかるが、陽性だったからといって今後感染しないかどうかは現時点では不明。
「抗体検査の状況がまちまちなのもわかっていますが、今、いくつかのグループでやっていて、相当安定的に数が見えてきていると思います。そうすると10万どころではないかもしれない」
その上で、安倍首相にも実際の感染者数がどれぐらいいるかわからないという認識か質したところ、首相はこう答弁した。
「日本のPCR検査数は他国と比較して少ないのは事実であるものの、検査陽性率は諸外国と比較して十分に低くなっている。各国と比較しても潜在的な感染者を捕捉できていないわけではないという指摘がなされているものと承知しております」
「他方で無症状の感染者がかなり存在していることも考えると、PCR検査だけで全ての感染者を把握することは困難であることもまた事実であって、そうした点も踏まえつつ、尾身先生も発言なさったのだろうと思います」
Source : 国内 – Yahoo!ニュース
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