大内悟史
東京都立大教授で社会学者の宮台真司さん(63)が30日、東京都目黒区の東京音楽大で講演した。昨年11月に八王子市の都立大キャンパス内で切りつけられ重傷を負った事件後、一般の多数の聴衆の前に立つのは初めて。事件直後からネットの動画配信などを通して発言を続けているが、また一歩、本格復帰が印象づけられた。
講演会は東京音大指揮部会が主催し、主に大学関係者が対象。宮台さんは「格差と分断 崩れゆく世界の中で」と題して、指揮者で同大学教授の広上淳一さんと、今を生きるアーティストはどのように生きていけばいいのかなどについて語り合った。
宮台さんは講演で、事件について「損得を超えて助けてくれた仲間がいて、とても力をもらった」と振り返るとともに、芸術や芸能に必要な「内からわき上がる力が失われたときにそれをどう回復させるか」について語った。言葉や法の秩序などが整い、互いに損得勘定にまみれた現代社会に生きる難しさについて、人はそうした秩序の中に「閉ざされなければ生きていけない。でも閉ざされ続けるのはダメだ。アートはつまらないルーティン、テンプレートの外に人を連れ出すべきだ」と説いた。オンライン聴講も含め、キャンパス内外で多くの人が耳を傾けた。
宮台さんが襲撃された事件をめぐっては、警視庁が容疑者と見られる男の画像を公開し、情報提供を呼びかけている。(大内悟史)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル