宮川彬良さん「クインテットの続きかも」 吹奏楽コン課題曲への思い

 10月23日の中学校の部から第69回全日本吹奏楽コンクールが始まる。出場団体は12分以内で課題曲と自由曲を演奏して評価を受ける。課題曲のひとつ「ぼくらのインベンション」は、全日本吹奏楽連盟の委嘱を受けた作曲家の宮川彬良さん(60)の作品だ。今の中高生たちが幼いころ、NHK番組「クインテット」で音楽の魅力を教えてくれた「アキラさん」に、この曲にこめた思いを聞いた。

 (僕が作曲した)「マツケンサンバⅡ」みたいな曲がいいんだろうなと思ったけど、ところがどっこい(笑)。ふだん、吹奏楽について思っていたことを音楽で真剣に表現しました。

 ある意味で、子どもたちに音楽のすばらしさを伝えるにはどうしたらいいか、責任を感じながらつくっていた「クインテット」の続きかもしれないね。

 僕のことをいろんな人が信用してくれて、こんなに発表の場があるのは、実は吹奏楽のおかげなんです。

 クラシックやロック、父(作曲家の宮川泰さん)の音楽……いろいろな音楽の中で育った僕は、若いころ、吹奏楽が苦手でした。きれいだけど、ごみひとつおちていない、無菌状態のような音。音楽というより、みんなでひとつのことをすること自体を楽しんでいるように見えて。

 でも、1997年になみはや国体の開会式の音楽を担当したときに聴いた、大阪の高校生500人のバンドと、日本有数のプロ吹奏楽団「オオサカ・シオン・ウインド・オーケストラ」(当時は「大阪市音楽団」)の音が衝撃的で。聴いたことがない、風のような響きと、生き生きとした遊び心。僕の目指していた音楽が、そこにあったんです。

 高校生バンドもすてきだったけど、特に、当時僕がやろうとしてできずにいた音楽を一緒に追求してくれたオオサカ・シオンとの出会いは大きかった。(大阪市からの支援が細るなどの理由で)彼らが苦境に立たされた時、できることは何でもしようと音楽監督を引き受けました。

 でも、吹奏楽との縁が深まるにつれて心配なことが。バッハもモーツァルトも知らないまま、吹奏楽部を離れると同時に音楽をやめてしまう人、楽器が押し入れのこやしになってしまう人があまりに多いよね。

 バッハは、この音とこの音を重ねたら響くとか、この音はこの音につながりたがっているとかいうような、千年以上かけて培われてきたルールをわかりやすく整理して教科書みたいな音楽をつくった人なんです。

 課題曲は、そのバッハが教えてくれたことを、たくさん楽しめる曲にしました。もっと音楽そのものの面白さ、楽しさを知って、好きになってほしいから。同時に、どうでもいい人も、どうでもいい音もない、みんな大切というメッセージも込めました。

 みんなで、自然にわき上がるような楽しさ、喜びを感じながら音楽を奏でてほしい。そして答えは出ないかもしれないけど、考えてみてほしい。音楽って何だろう――。(聞き手・魚住ゆかり)

     ◇

 みやがわ・あきら 「身毒丸」や連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK)など舞台やドラマの音楽も多数手がける作曲家・舞台音楽家。2014年からオオサカ・シオン音楽監督。

    ◇

 10月24日に予定される第69回全日本吹奏楽コンクール高等学校の部をはじめ、コンクールのすべての演奏を、全日本吹奏楽連盟と朝日新聞社はオンラインでライブ配信します。会場への入場は出演関係者に限られ、入場券の一般販売はありません。配信の詳細は専用サイト(https://www.asahi.com/brasschorus2021/wbandcompetition.html?ref=article)をご覧ください。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment