「目新しい課題に作り替える」。これが今回の先延ばし克服術のポイントです。新しいことって、なんだかわくわくしますよね? それを応用すればいいのです。臨床心理士の中島美鈴さんが解説します。
飽きたときには…
人はなぜ先延ばしをしてしまうのでしょう。きっとその作業に興味がないのです。やらねばならないけれど、退屈で、うんざりするのです。毎年の大掃除も、いつのまにかたまってしまう不用品の処分も、草取りも、確定申告も。何度も繰り返してきたことは「ああ、またあれなんだ」と飽きてしまいますね。
そのくせ、「マイナポイントがもらえるらしい!」のような、新しいもの、すぐにお得な結果が得られるものについては飛びついてしまうことってありませんか?
そうです。今回の先延ばし克服のポイントは「目新しい課題に作り替える」です。
これまでに述べてきたように、新奇性のあるものにひかれるがADHDの脳の特徴です。反対にルーチン、義務には反応できません。この特徴を踏まえると、いつもどおりの課題でも新しいやり方で取り組む、いつもと違う場所で取り組むなどの工夫ができそうです。
発想を変えてみる
リョウさんは、子ども部屋にする予定だった部屋には、物があふれて足の踏み場もなくなってしまっていました。この部屋を片付けることに着手したのですが、どうしても作業に入る前には憂鬱(ゆううつ)で、あれこれと言い訳をして、しないことが続いていました。
リョウ「ほら、こんな天気のいい日に、部屋の片付けなんてもったいないじゃない」
こんなかんじです。
リョウさんは、もう「片付け」に飽きていたのです。
ゴミ捨ての日に3個不用品を捨てる、についても最初こそ家族で盛り上がりましたが。飽きっぽい3人は5回目のゴミ出しでその習慣をやめてしまいました。
それでもけっこう持った方ですよね。3個の不要物を3人で5回捨てたのですから、合計45個も捨てることができたのです。大進歩ですよね。
そこで今回はリョウさんに、片付けの作業自体を「新しいやり方」でやってもらうことにしました。これまでは「不要物を見つける」という作業でしたが、この発想を逆転するなんてどうでしょう?
これ、売ったらいくらだろ
「売ったらお金になりそうなものを見つける」作業です。もちろん必要なものは売れませんが、不要なもので、リサイクルショップで即現金化できるものを発見できれば、金銭的な報酬が生じます。まるで宝探しのような気分で片付けが進みます。
お片付け講座に参加する、お片付けの秘訣(ひけつ)の本や動画の方法でやってみる、など、とにかく自分がこれまでやったことのない方法で行うのがよいでしょう。
リョウさんの夫は、リョウさん以上に飽きっぽい性格なので、音楽を聴きながら事務仕事をこなすそうです。「自分の好きな曲三つを選択して、その再生中に一つの仕事を終わらせる勝負」を仕掛けるそうです。仕事を、曲との競争という勝負事に変えている点が、競争心の強い性格とマッチしていたようです。
その他にも自分のデスクだけでなく、休憩室のテーブル、外回りの喫茶店の中など、あらゆるところで、場所を変えて仕事することで、自分が飽きないように工夫しているようです。
昔、私がある大学で働いていた頃、当時の私には不似合いなぐらい立派な広い研究室をいただきました。申し分ない広い空間、誰にも邪魔されない一人だけの研究室だったのに、私はどうしてもそこで集中できませんでした。その代わりにキャンパスのレストラン、学生食堂の机、図書館と、いろいろなところでパソコンを広げてみました。不思議とはかどりました。ある時には電車の中で、飛行機の中で。そんな話をしたら、同じキャンパス内の別の研究者の先生も「実は僕もそうなんだ。ひとりきりだと、ついついネットばかりしてしまって、自己嫌悪」と打ち明けてくれました。
カフェを見渡すと
そうなんです。大手コーヒーチェーン店にもたくさんのノマドワーカーがあふれていますね。一人職場の人、上司のいないフリーランスの人など、誰からもマネジメントしてもらえない人たちの中には一定数、「どうしよう、自由すぎて、集中できない」という困りごとを抱えた人がいるのでしょう。
はやり物を取り入れるもよし、場所を変えるもよし、仲間をみつけるもよし、とにかくこれまでと違った目新しい課題に作り替えて、やる気を継続させてみましょう。
◇このコラムの筆者があなたの先延ばし癖の改善を応援します。毎週土曜の朝、オンラインで実施です。詳細はこちらから。「働く人のための時間管理グループレッスン」(http://ptix.at/Ou2Bjb
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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