16億円の借金は、6億円を返せば残りの返済は免除する――。ある男性が残した巨額の借金をめぐり、銀行と結ばれたこんな和解を男性の死後も忠実に守った遺族が、東京国税局に「10億円の利益を得た」と所得税の申告漏れを指摘された。計約2億5千万円を納付するよう求められ、納得のいかない遺族は訴訟を起こして争った。3月に下された裁判所の判断とは。
訴訟の主な争点は、①返済を免除された10億円が「利益」といえるか②利益だったとして、銀行との和解を成立させた弁護士への報酬などは控除できるか、の2点だ。
どんな状況だったのか。
発端は30年前の巨額借金
3月14日付の東京地裁判決によると、問題の発端は、ある男性名義で1993年に銀行から借り入れられた16億円だった。その頃、東京都千代田区二番町の土地と建物(マンション)が男性名義で購入された。
2002年、返済を求める銀行側と、「男性には契約当時、判断能力がなかった。一連の取引は銀行側が男性の子と通謀して進めたものだ」などと訴える男性側との間で裁判になった。
だが男性はまもなく死亡。裁判は子や孫らが引き継いだ。
銀行と「免除」に向けて和解
裁判所は翌03年、和解に向けた見解を示した。「男性にはアルツハイマー型の認知症で意思能力がなかった可能性が高い。手続きをしていたのは男性の子だった」「だが子に男性を代理する権利があったかは疑問がある」「子が金を返すべきだが、全額ではなく、マンションの相当額と、相続財産の6分の1を返すのが相当だ」との内容だった。
これを踏まえ、銀行と遺族は「支払い義務がある男性の子が、16年までに計約6億3千万円を分割で返せば、残りの約9億7千万円は免除する」などの内容で和解した。
完済したら…国税「利益を得ている」
子は14年に死亡したが、その妻子が債務を引き継ぎ、予定通り支払いを終えた。
ところが18年、東京国税局…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル