家族で逃げる瞬間、轟音とともに「ばあちゃん」は消えた

 大きな被害をもたらした台風19号の上陸から19日で1週間になる。これまでに確認された犠牲者は80人。残された人たちの脳裏には、いまも生前の姿が鮮明に残る。

 宮城県丸森町の耕野地区。山深い阿武隈川沿いの斜面に立つ家で、八巻ちゑさん(83)は、台風19号の大雨で崩れた土砂に命を奪われた。玄関へ逃げようとした一瞬のできごとだった。「少しでも早く逃げていたら、ばあちゃんは助かったかもしれない」。家族は悔やむ。

 台風が迫った12日夜、一家4人は居間で台風のニュースを見ていた。突然、地鳴りのような音が響いた。孫の一生(かずい)さん(37)が「やばい」と思った次の瞬間、裏山から土砂が1階に流れ込んだ。

 4人は慌てて逃げる準備を始めた。一生さんは父辰雄さん(58)と2階へ駆け上がった。10分後、母はるみさんが先に靴を履いていると、玄関まで来たちゑさんは1階の自室へ引き返そうとした。持病の薬なのか、忘れ物を取りに行こうとしたらしい。

 その時、地震のように家が揺れた。

 「ズドン!」という轟音(ごう…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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