家族にも言えない秘密を抱えて生きる私 一度は捨てたコーランを手に

 休日。カバンの奥底に1枚のスカーフをこっそりと入れて家を出る。

 少しだけ早足で向かう先は、駅やコンビニのトイレだ。人目を忍んで個室にこもり、鍵を閉める。

 スカーフを頭に巻き付ける。恐る恐る扉を開け、少しだけ晴れ晴れとした気持ちで、トイレを後にする。

 さあ、今日はどこに出かけようか。雑踏の中なら目立つことはないだろう。

 でも、スカーフを巻かない日も、心の中では常に身にまとっているのだ。

 近畿地方に住む女性は、そんな生活を続けてもう3年以上経つ。

 一緒に暮らす両親に隠している秘密がある。その秘密を伝えられる日は、いつになったら来るのだろう。

ひっそりと手にしたコーラン

 中学1年のころだった。世界史の資料集で、聖地のカーバ神殿をはじめとするイスラムの文化が紹介されていた。

 世界三大宗教の一つ、イスラム教。世界の人口の4分の1はムスリム(イスラム教徒)と言われています。日本でも年々増え、研究者は「婚姻に伴うもののほか、自ら入信する日本人も増加しているようだ」と話します。日本で生まれ育ち、ムスリムとして生きることを選んだ日本人を取材しました。

 女性は髪の毛を隠す布「ヒジャブ」を身につけ、男性は全身を白い布に包まれている。

 「かっこいい」

 直感的に思った。

 そんなムスリムのファッションや中東の文化、建物への憧れからイスラム教に興味を持ち始めた。

 お小遣いをためて、日本語版のコーランを買った。コーランはイスラム教の聖典だ。独学でアラビア語も勉強した。

 でも、家族に知られてはいけ…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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