沈む夕日に照らされ、漁船が浮かぶ水面がオレンジ色に輝く。宮城県気仙沼市唐桑町の鮪立(しびたち)漁港。2023年7月、白いペンキで塗られた木造2階建てのこぢんまりとした小屋が、海のそばに完成した。
もとは漁網を入れる倉庫だった。11年の東日本大震災で津波に遭い、奇跡的に流されず残った。それを改修した。
その名は「Sauna of the bay つなかんサウナ」。
リアス海岸の入り江を望み、内壁には船上から見た三陸沿岸の山なみが描かれ、海と山に抱かれた気仙沼を体感できる。
「海は見たくないと思ってた。でもやっぱり、私が好きなこの海を見てほしかったの」。民宿「唐桑御殿つなかん」のおかみ、菅野一代(いちよ)さん(60)の言葉には、この約13年が凝縮される。
震災から6年後の17年3月、漁船の転覆事故で長女が亡くなり、夫の和亨さんと三女の夫が行方不明になった。津波の被災から立ち直ったあと、最愛の家族3人を失った。「海なんてなくていい。見たくない」
深い悲しみに沈むころ、菅野さんはあるものに出合った。特徴的な丸いフォルム。車両に薪(まき)ストーブが内蔵され、車で牽引(けんいん)できるトレーラー型サウナだった。
東北のサウナが熱い。厳しい自然環境を逆手にとったり、自然災害からの復興のシンボルとなったり……。少子高齢化、人口減が進むなか、おらほ(私たち)のサウナからみえる東北の魅力と可能性を探ります。
「家族のような」存在、集うサウナー
贈り主は、交流のあった公益…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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