犯罪にかかわった疑いがあるとして警察が逮捕など検挙した容疑者から得たDNA型のデータベースの登録件数が、年間十数万件のペースで増え続け、2019年末時点で約130万件にのぼることがわかった。日本の人口のほぼ100人に1人にあたる数だ。検挙した容疑者の多くからDNAを得ている計算で、対象の罪種は重要犯罪に限らず軽微なものも含まれている。
朝日新聞による警察庁への情報公開請求や関係者への取材で明らかになった。
警察は逮捕や取り調べをした容疑者から主に本人の同意を得てDNAを採取し、現場に犯人が残したとみられる遺留物からも採っている。それらを鑑定し、判明したDNA型を警察庁のデータベースに登録。それぞれのデータベースへの照会で年間5千~6千件が一致し、容疑者の割り出しや余罪の解明につながっている。
データベースの登録件数は19年12月末現在、容疑者DNA型が129万6765件、遺留DNA型が3万4374件。遺留DNA型が16年の約4万2千件をピークに減少傾向にあるのに対し、容疑者DNA型は一貫して増え続けている。
19年11月末現在の開示資料によると、容疑者DNA型の罪種別内訳では、「殺人」「強盗」「強制性交等」などの重要犯罪は全体の4・8%。一方で、「窃盗」が約42万件、特別法犯の「その他」が約21万件、刑法犯の「その他」が約19万件にのぼり、双方の「その他」を合わせると全体の3分の1近くを占める。
「その他」の具体的罪種について警察庁や捜査関係者に取材したところ、刑法犯では詐欺、占有離脱物横領、脅迫、遺失物横領など、特別法犯では道路交通法違反、銃刀法違反、出入国管理法違反や軽犯罪法違反、風俗営業法違反などが含まれるという。
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警察による検挙人員は刑法犯と特別法犯を合わせて年間約25万人。容疑者DNA型の新たな登録件数は年間15万件前後で推移しており、検挙した容疑者の多くからDNAを採取していることになる。警察庁は「軽い犯罪から重大な犯罪につながるケースがある。むやみに採取しているわけではなく、余罪捜査の必要性などを判断しながら行っており、(数は)個別に判断した結果だ」と説明する。
容疑者DNA型について欧米では法律を定めて罪種を絞るなどしている国が多いが、日本では国家公安委員会規則や警察庁の通達などで運用され、罪種の限定はない。
データベースの運用は04年12月に遺留DNA型で、05年9月に容疑者DNA型で始まった。当時、警察庁ではDNA型鑑定について法制化も検討されたが、現行法の枠内でデータベースの拡充を進めていくことにした経緯がある。
また、データベースからの抹消は、警察庁の規定で「死亡した時」と「保管する必要がなくなった時」に行うとされている。実際に抹消するかどうかは個別に判断しているといい、容疑者が不起訴処分や無罪判決を受けても抹消されるわけではない。
一方、警察は殺人事件などで現場周辺の住民ら「捜査協力者」からもDNAを採取することがある。遺留物との照合などが目的で、警察庁は容疑者でないと分かれば協力者のDNA型をデータベースに登録することはないと説明。容疑者や捜査協力者から採取し、鑑定で余りが出た資料は廃棄しているという。
DNA型鑑定とは
人の細胞の核のなかにあるDNA(デオキシリボ核酸)は4種類の塩基と呼ばれる物質が含まれ、同じ並び方が繰り返される回数を「型」として個人識別ができる。その精度は最新の検査法で565京(けい)人に1人。DNAのうち身体的特徴や病気などにかかわる遺伝子が含まれるのは全体の約2%とされ、警察はそれ以外の部分を鑑定に使うとしている。
■<視点>根本的な議論のな…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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