容疑者の散髪担う理容師 言葉は控えめに、鏡越しに寄り添った23年

 逮捕された容疑者の散髪を20年以上にわたり担い続ける理容師がいる。警察署に呼ばれては本人の求めに応じて希望どおりの髪形にする。余計なことは口にしない。でも、もし罪を犯したのなら早く償って立ち直ってほしい――。容疑者と鏡越しに向き合いながら、握るはさみに思いを込める。

 堀健一さん(75)=新潟県燕市吉田中町=は、江戸時代から続く理髪店の8代目。中学を卒業してすぐ資格を取り、理容師の世界に入って60年になる。

 同じ理容師のおば夫婦が警察署から、署員や容疑者の散髪を請け負っていた。体調を悪くして続けるのが難しくなり、おばから頼まれて引き継いだ。23年前の1999年のことだった。

 「大変なことを引き受けちゃったと思った」。思い出すのは、Tシャツから透けて見えた背中の立派な入れ墨。「手が震えて汗びっしょり。悪いことをしたんだろうけど、そういう人に限って『さっぱりしてよかったよ』と礼を言ってくれた」

事件には触れず 慎重に選んだ言葉は

 留置場にまだ空調設備がなか…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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