東日本大震災で被災した文化財の修復と保存に奔走する高校教師がいる。両親を津波で亡くした喪失感から自身の心を復元するため、そして復興への道しるべとするため。支えになっているのは、親交があった瀬戸内寂聴さんの言葉だ。
岩手県陸前高田市にあった江戸時代に徴税や簡易裁判を担った仙台藩の役人の邸宅「旧吉田家住宅主屋」。津波で基礎を残して流されたが、復興のシンボルとして復元されることが決まった。4月の上棟式に向け、作業が進められている。
1千個のパーツ集め復元
復元を呼びかけたのは、盛岡市の高校教師、佐々木勝宏さん(60)だ。ばらばらになった吉田家住宅の姿に心を痛め、「復元すれば住民を元気づけられ、地元の大工の技術伝承にもなる」と考えた。研究者らとかやぶき屋根や柱など1016個の部材を集め、作業の開始にこぎ着けた。
流失した文化財を復元する試みに没頭するきっかけとなったのは、寂聴さんの一言だった。
交流が始まったのは2008…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル