各地のB級ご当地グルメが一堂に会するイベントとしてブームになった「B―1グランプリ」。新型コロナで開催が途絶えていたが、三重県四日市市で11月、支部大会「東海・北陸B―1グランプリ」が開かれる。コロナ禍後では初のB―1で、「富士宮やきそば」など知名度の高いグルメがある静岡からは4団体が参加する。
2006年に第1回の全国大会(青森県八戸市)があったB―1は、来場者がご当地グルメを食べ比べ、はしを使った投票で順位を決めるイベントとして人気を集めた。来場者数が最も多かったのは12年に北九州市であった全国大会で、2日間で61万人だった。
東海・北陸B―1に参加する静岡県内の4団体の一つが、ご当地グルメによるまちおこしの代表格で、B―1全国大会で第1回から2連覇した「富士宮やきそば学会」(富士宮市)。コロナ禍が始まる直前の19年11月に兵庫県明石市であった第11回の全国大会以来、4年ぶりになる。やきそば学会の渡辺孝秀代表(71)は「久々の大型イベントだ」と喜ぶ。
富士山本宮浅間大社前の「お宮横丁」にある富士宮やきそばのアンテナショップ。コロナ禍の最中は一時休業し、観光客は激減した。やきそば学会によると、富士宮やきそばを提供する店も感染拡大や高齢化が影響し、コロナ禍前に比べて20店ほど減り、今は約70店という。ただ、アンテナショップを運営する会社の渡辺彩専務(38)によると、「今はコロナ禍前よりも来店者が多く、富士宮やきそばの人気は衰えていない」と話す。
将棋の藤井聡太七冠(21)が対局の際に食べるおやつが話題になり、県内でも提供した店に客が詰めかける現象が相次いでいるのを見て、渡辺代表も「世間の食に対する関心は高い」と感じている。
B―1本番では約20人のメンバーが焼き手やキャベツ切り、盛りつけなどの役割を分担して、大量のやきそばを提供する。コロナで祭りが中止になり、ノウハウが継承されにくくなった問題が各地で起きている。だが、やきそば学会はB―1が中断していた4年間も、スポーツイベントなどに出店しており、「ノウハウは保たれている」(渡辺代表)。コロナ禍中も、やきそばの缶詰など企業とのコラボ商品を売り出すなど、ご当地グルメのPRに努めてきた。
東海・北陸B―1でも、来場者の投票で順位が決まる。渡辺代表は「全国大会で金賞を取った団体の自負がある。トップを目指したい」と意気込む。
県内から他に参加する「浜松餃子(ぎょうざ)学会」(浜松市)の広報担当の花枝一則さん(56)は「どのぐらいの行列ができるか楽しみにしている」。「西伊豆しおかつお研究会」(西伊豆町)の芹沢安久会長(54)は「コロナ禍の最中は地元での食育活動に力を入れてきた。ようやく地域外で、西伊豆町の伝統食材をアピールできる」、「富士つけナポリタン大志館」(富士市)事務局の神尾英尚さん(52)は「B―1が長く途絶え、来場者数が心配だが、貴重な情報発信の場なので最大限PRしたい」と話している。
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四日市市での「東海・北陸B―1グランプリ」は当初、2020年5月に予定されていたが、新型コロナの感染拡大で開催が見合わされていた。当初予定から3年6カ月延期される形で、11月18、19日に、近鉄四日市駅に近い市中心部で開かれる。主催する「ご当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」(通称・愛Bリーグ)や市によると、周囲でもグルメのイベントが再開され、「感染対策と経済活動の両立が求められている」として、開催を決めたという。市は2日間で約10万人の来場者を見込んでいる。
愛知、岐阜、三重、静岡、福井の15団体のほか、「甲府鳥もつ煮でみなさまの縁をとりもつ隊」(甲府市)や「十和田バラ焼きゼミナール」(青森県十和田市)などのゲストの5団体の計20団体が参加する。
B―1は、静岡県内では07年に富士宮市で第2回の全国大会が開かれ、地元の富士宮やきそば学会が1位の金賞を獲得した。また、17年には富士市で支部大会の「東海・北陸B―1」があった。(小山裕一)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル