富士山(標高3776メートル)の吉田ルートが1日、山開きを迎えた。新型コロナウイルスの影響で2020年は全登山道が閉鎖。昨年は2年ぶりに山開きをしたが、登山者数は19年の約3分の1に減った。今夏は3年ぶりに登山者が戻ることが期待されている。
この日開通したのは、山梨県富士吉田市の5合目から山頂をめざすルート。その山頂部では1日は早朝から快晴で、午前4時半ごろに東の空を赤く染めながら太陽が昇った。
富士山には20回以上登ったという横浜市の鏑木昌幸さん(64)は「今まで見た中で一番きれいなご来光。雲がなく、太陽が真ん丸のまま昇るのは初めて見ました」。ドイツから仕事で来日中のニコル・イェケルさん(48)は富士山に登るのが長年の夢だったという。ご来光を見て「ベリーナイス。一生のメモリーになります」と喜んでいた。
富士登山で、多くの登山者が利用するのは5合目から山頂に向かう四つのルート。静岡県側の須走(すばしり)、富士宮、御殿場の各ルートは10日に開通する見込み。いずれも9月10日までを予定する。
水分をとりながら、ゆっくりと登って
標高の高い富士山を登るにあたって注意したいのは高山病と寒さだ。
吉田ルート8合目の山小屋「太子館」総支配人の堀内由彦さん(63)は「水分をとりながら、ゆっくりと登ることが大切」と登山者にアドバイスする。服装については「5合目は暑くても、上に来ると寒くなる。防寒対策をしっかりしてほしい。軽装では絶対に来ないで」。また、一日で山頂を登り降りする「弾丸登山」は、けがなどにつながりかねず危険なため、控えてほしいと呼びかける。
登山道は、6月23日に山梨県などが安全確認の調査をした際は山頂付近に残雪が多くあったが、その後数日間強風が続き、一気に雪が解けたという。現在は登山道に雪は残っておらず、普通の登山靴であれば、問題なく山頂まで行くことができる。
空気清浄機と抗菌カーテンを用意
また、この夏は各山小屋では感染防止対策を徹底して登山者を迎える。宿泊は事前予約制(週末は完全予約制)とし、定員も半分ほどに抑える。週末やお盆期間を中心に満室となっている山小屋もある。
吉田ルート7合目の「鎌岩館」では、宿泊部屋の換気を徹底し、仕切りとして抗菌カーテンをつけた。
枕カバーは使い捨て。食事をする大広間には空気清浄機とサーキュレーターを置いて換気を徹底する。テーブルにアクリルの仕切り板を置き、飛沫(ひまつ)を防ぐようにした。
岩佐克圭代表(43)は「換気、清掃、除菌などコロナ対策を徹底している。安全に気をつけて、富士登山を楽しんでほしい」と話す。(石平道典)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル