池田拓哉
世界文化遺産・富士山の保全管理や活用について専門家が助言する「富士山世界文化遺産学術委員会」の会議が13日、東京都内で開かれた。山梨県が登山道の混雑緩和策として通行料2千円を徴収する方針を示し、識者から意見が相次いだ。
県は今夏から吉田口登山道の5合目にゲートを設置し、任意による従来の保全協力金(千円)とは別に、ゲート通過者から通行料を徴収。登山道の整備費や下山道のシェルター設置費などにあてる計画だ。
これに対し、世界文化遺産アドバイザーの山本清龍さんは「ちょっと高いのではないか」と指摘。加藤峰夫・横浜国立大名誉教授(公園利用)は「法的に問題はないと思うが、世間的な納得が得られにくいのではないか」と、負担の必要性について説明に努めるよう求めた。「通行料を登山道の文化財の維持管理や修理にも充てる必要がある」と指摘する識者もいた。
県世界遺産富士山課の笠井利昭課長は会議で「富士山の文化的価値の継承にもなると考えている」と対策の意義を強調。会議後、記者団の取材に「当面は混雑緩和と弾丸登山防止の観点で通行料への理解を得たい」と今夏の導入を進める考えを示した。
一方、静岡県は十分な休息を取らずに徹夜で山頂をめざす「弾丸登山」の防止対策として、シャトルバスやマイカーの夜間入山制限を検討する意向を示した。交通事業者の協力を得て、数年かけて社会実験をする考えという。静岡県側の登山道は県有地でないため、エコツーリズム推進法を根拠とした入山管理の方法を新年度に研究するという。
学術委員会は、山梨、静岡両県や国などでつくる「富士山世界文化遺産協議会」に対し、2014年から助言や報告をしている。昨年11月、委員長の青柳正規・山梨県立美術館長が、登山者抑制に向けて新たな対策を検討するよう求めていた。(池田拓哉)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル