小さくても学べて生活が豊かに 新しくて古い働き方「ナリワイ」

 お仕事はなんですか。

 「モンゴル武者修行」の企画と実行、家の床張り、ミカンの収穫と販売、野良着の開発と販売、遊牧民の移動式住居のゲルの輸入……。

 いったい何をしている人なんだろうと考えてしまうほど、伊藤洋志さん(43)の仕事は多種多彩だ。

ナリワイってなんだ?

 伊藤さんは、こうした数々の仕事を「ナリワイ」と呼ぶ。そもそも伊藤さんの考える「ナリワイ」とはなんだろうか。

 「個人レベルで始められて、自分の時間と健康をマネーと交換するのではなく、やればやるほど頭と体が鍛えられ、技が身につく仕事」と定義する。

 一つ一つの仕事は小さくても、組み合わせて生活を成り立たせる。価値観を共有できる人たちに向けた個人サイズの仕事なのだという。

 例えば、水害に遭った建物の復旧をきっかけに、床張りを始めた。そこから発展し、「床さえ張れれば家には困らない」を合言葉に「全国床張り協会」を設立した。家主の依頼を受け、参加者と合宿して床張り技術を学ぶ。「3日ほどで床は張れるようになる。自分でもできるんだと実感できるのが活動の意義」

 さらに、土窯を使ってパン屋を営む知人を講師に、参加者を募ってワークショップを開催した。数日かけてパンの焼き方と販売の仕方を学んだ。

 木造校舎で結婚式を挙げたいとの要望を受けて、オリジナルの式を企画運営したこともある。農家になった学生時代の友人から人手不足の相談を受け、農繁期に梅やミカンの収穫、販売を手伝った。ここから「ナリワイ遊撃農家」が生まれ、桃やサクランボにも広がった。

 和服をベースにした今風の「野良着」を作って販売を始めた。地震発生時には倒壊の危険もあるブロック塀をハンマーで壊すというのもナリワイの一つだ。

ナリワイが誕生するまで

 こんな働き方を模索するようになったきっかけは、自身の就職だった。いずれは自ら仕事を立ち上げるつもりだったが、社会人経験を積むため、京大大学院を修了後、東京のベンチャー企業で働いた。

 しかし、過度のストレスにさ…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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