雨宮徹
同じ姿勢で座り続けることがしんどい。バリカンなどの音が怖い――。発達障害の子には、店で髪を切られるのが苦手な子がいる。1月、三宅亮輔さん(39)が岡山市北区下伊福本町でオープンさせた美容室「Tsumiki(ツミキ)本店」は、そんな子の不安を和らげることを目指した。
店名には「違った形の積み木が組み合わさるように、色々な個性の人が集まる場所」との思いが込められている。
バリカンやドライヤーは音の小さな物を使う。「予習」してもらうため、カットの流れを理解できる絵札をそろえ、大声OKの防音スペースや車いすの子向けのカットスペースも設けた。
本業は理美容の道具などを扱う卸売会社「トライエンゴ」(倉敷市)の社長。数年前、ハサミなどを怖がり泣き叫ぶ子を取引先の店で見た。感じたのは「行きづらい子にマッチした美容室を作った方がいい」。
ダウン症の子を育てるデザイナー夫妻のアドバイスを受け、出店計画を立てた。クラウドファンディングでは約80万円が集まった。カットを担うのは、賛同する美容師らだ。
橋渡し役になろうと考えたのは、病気がちな幼少期を送った自身の経験もあるという。「慣れるまでは遊ぶために来ても構わない。美容室というよりは一つの居場所と思って欲しい」
開店から1カ月近く。利用者からは感謝とともに「こんなに自由でいいんですか?」という驚きの声が寄せられているという。ビジネス面も含めてほかの場所への展開を目指している。どんな子でも利用できるが、完全予約制で土・日曜休み。駐車場あり。問い合わせは(086・728・5790)へ。(雨宮徹)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル