小型旅客船の事故では、大けがをした乗客の約7割が腰や背中などが折れる「脊椎(せきつい)骨折」だった――。船や飛行機、鉄道の事故原因を調べる国の運輸安全委員会の調査で、こんなデータが明らかになった。脊椎骨折した人のほぼすべてが船首近くに座っていたこともわかり、運輸安全委は「波が高くなる冬場は揺れによる事故が起きやすい。小型船では、なるべく揺れない後ろの席に座ってほしい」と呼びかける。
国土交通省の調査によると、全国には約2200の旅客船があるが、このうち7割が20トン未満の小型船だ。旅客の少ない近距離航路で多く使われている。
大きな船に比べて波の影響をうけやすいが、障害物に衝突して浸水した場合でもすぐに脱出できるようにシートベルトの設置義務がない。そのため、高い波で船体が揺れて乗客が座席に尻もちをつき、脊椎を骨折する事故が後をたたない。
例えば、2019年12月に鹿児島県沖であった旅客船「なんきゅう」(19トン)の事故では、高波で船体が大きく揺れ、乗客55人のうち14人がけがをした。このうち9人が座席に尻を強く打ち付けた脊椎骨折で、いずれも客席の3列目までに座っていたという。
運輸安全委が08~19年に起きた旅客船の死傷事故115件を調べたところ、重傷以上のけが人がいた小型船の事故は28件で、37人が大けがをしていた。このうち16件の25人は脊椎が折れる大けがをしていた。重傷者の68%が脊椎骨折だったことになる。
船首側の大けが、なぜ多い?
報告書が公表されている事故をさらに詳しく見ると、軽傷と診断された人も含めて脊椎(せきつい)を骨折していた29人のうち、28人が船首側の席に座っていたという。
船首側の席で脊椎骨折が多いの…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル