東京都の小池百合子知事は1日の4者協議で、東京オリンピック(五輪)のマラソン・競歩の札幌への変更決定を「合意なき決定」と、悔しさをにじませた。「同意はできないが、最終決定の権限を有するIOCが下した決定を妨げることはしない。東京での実施がベストという考えは、いささかも変わらない」と、硬い表情で語った。
【写真】3年間の調査が台なし…マラソン札幌開催なら地の利下がる
暑さ対策から、「札幌ありき」で進んだ議論。意思決定プロセスで蚊帳の外に置かれた小池氏は、先月30日の調整委員会で、「都民の代表」として徹底抗戦を宣言した。東京開催へ「さらに戦うことも検討した」というが、実際はIOCの絶対的権限を前に、なすすべはなし。法的手続きに踏み切っても勝てる望みはなく、訴訟費用も莫大(ばくだい)だ。会場決定の難航は、選手の準備にも影響を及ぼす。現実を前に「(戦うのは)賢明ではない」と矛を収めるしかなかった。
「変更はもう決まったと言い放っている相手に対し、タフな交渉だった。IOCの説明には、どうしても納得いかないところがある」と恨み節も。4者協議の場では、スピーチの許可を求めた小池氏を、コーツ氏が「したければどうぞ。議論しようと思っているのではない」とあしらった。会場変更に関するIOCの謝罪は、なかった。
小池氏はかねて「孫子の兵法」を愛読。「自らを知り、環境を客観的に見ながら戦う」のが信条だ。「変更は難しいとの見解でも、そこから始めるのが交渉ごと」。劣勢なりの打開策を模索した。1日午前2時ごろ、バッハIOC会長からメールで、大会後、東京で「祝祭マラソン」開催という代替案を打診された。「準備を進めた沿道の方々の期待は大きい。幻のマラソンコースを幻に終わらせないためにも、1つの具体的な実になったのでは」。実を勝ち取ったと強調した。
「気候変動はリアルな問題。避けずに議論するテーマではないか」。環境相経験者でもあり、夏季五輪の開催時期再考の必要性も訴えた。【中山知子】
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