小田急線の刺傷事件、被告に懲役19年の判決 東京地裁

 小田急線の車内で2021年8月、乗客3人を無差別に包丁で襲ったなどとして、殺人未遂などの罪に問われた住所不定、無職対馬悠介被告(37)の裁判員裁判で、東京地裁(中尾佳久裁判長)は14日、被告に懲役19年(求刑懲役20年)の判決を言い渡した。被告の行為を「公共交通機関である電車内、しかも走行中で逃げ場のない状況で、無差別に乗客を次々に襲ったもので、非常に悪質」と非難した。

 対馬被告は起訴内容を認めており、量刑が争点となっていた。

 起訴状によると、対馬被告は21年8月6日午後8時半ごろ、登戸(川崎市)―祖師ケ谷大蔵(東京都世田谷区)を走る電車内で、当時20~52歳の3人の胸を包丁で刺すなどして殺害しようとしたとされる。3人は1週間~約3カ月のけがをした。

 公判で検察側は「幸せそうなカップルや勝ち組の女性など幸せそうな人たちを殺したいと考えていた」と指摘した。

「僕だけ貧乏くじ」

 対馬被告は被告人質問で「僕だけ割を食っている。貧乏くじを引いている」「あらゆる人が幸せに見えた」などと語り、憎しみや恨みを募らせたという経緯を明らかにした。

 事件当日は、昼ごろに東京・新宿の食品店で万引きをしようとして見つかり、警察の調べを受けた。いらだちを覚え、当初は警察官や店への仕返しを考えた。しかし、いずれも難しいと思い、以前から考えていた「電車内で人を刺して火をつける」妄想を実行に移した、と説明した。

 検察側は論告で、「何ら落ち度のない被害者を狙った無差別殺人未遂事件だ」と指摘した。被害者が無防備で逃げ場もない中、最初の被害女性を手加減なく4回も突き刺すなど、執拗(しつよう)で悪質だとも非難した。

 一方の弁護側は、殺意の程度は低く、「真摯(しんし)に反省、謝罪の気持ちを示し、更生の可能性がある」と指摘。双極性障害の影響も受けていたとして、懲役15年が相当と主張していた。田中恭太

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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