愛知県南知多町で名古屋市の業者が10月から始めた太陽光発電設備の設置工事が、広範囲の山林伐採につながり、地元でトラブルとなっている。無断の土地造成や樹木伐採も指摘されている。業者は2月に始めた三重県いなべ市でも同様の問題を起こし、市から再三にわたる指導を受けていた。同じ問題を各地で繰り返す業者への不信感は、さらに強まる可能性がある。
業者は名古屋市北区に本店を、中村区に営業本部を置く「ディーエスエス」(DSS、木下誠剛社長)。南知多町では、町への届け出が必要のない小規模設備を今年度に91カ所、来年度に16カ所稼働させる計画を公表。施設の所有者を、D社と従業員3人の4者に分割するとしている。
だが愛知県は、計画全体を一体とみなせば県への届け出が必要な大規模開発にあたり、法令違反につながる可能性もあるとみて、D社に詳細な事業計画の提出を求め、監視を強めている。
南知多町も、D社の造成工事で17カ所の損壊が確認された町道を21日から改善までの間、通行止めにした。町内に5カ所ある計画地の一つに通じる道で、D社はこの場所での計画を24日までに「白紙」とした。
一方、いなべ市によると、D社は同市北勢町東貝野地区でも、赤道(あかみち)や青道(あおみち)と呼ばれる市管理の生活道や水路を無断で壊していた。市は3月に原状回復を命令。市道の損傷も判明し、4月に原状回復などを命じた。生活道については、市とD社、地権者らが立ち会いのもとで境界標の杭を立てたが、その後の工事で倒されてしまったという。
また市は、地籍事業で設置した境界標の杭の損壊も確認、6月に原状回復を勧告した。「これほど指導・命令を繰り返した事例はなく、通常業務の支障になっている」と苦言も添え、D社に法令順守を求めた。
このほか現場に重機を入れるため、売買契約のない地権者の土地に無断で鉄板を敷いたほか、無断で樹木を伐採するなど、南知多町と同様の被害報告が多数寄せられているという。
いなべ市の地元自治会は7月、工事中や工事後、発電事業終了後を見据えた誓約書をD社と交わしたが、いなべ市は事業の行方を注視している。
D社は18日、南知多町での説明会で、町道の損壊などを認め謝罪し「故意ではなかった」と弁明した。説明会では「いなべ市では46発電所を稼働中、20発電所を次年度に稼働予定」と紹介したが、地元でのトラブルには触れず、南知多町での問題も「誤伐採」「従業員への指示誤り」と説明した。
木下社長は、いなべ市で指導された問題を南知多町で再発させたことについて「より慎重にと思って、町に相談しながら同じ轍(てつ)を踏まないようにやったが、走り方がまずかったのか。ふがいない気持ち」と述べた。県が詳細な事業計画を求めたことには「(大規模な)一体開発で(届けを)出せと言われたら、一体開発で出す。今まで言われなかった」と話した。(嶋田圭一郎)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル