《あなたの悪い事はすぐ怒ること。相手の事をよく聞いて怒るべし》。そんなお小言はチラシの裏につづられている。
別の裏紙には苦しい生活の中で我が子を思う気持ち。《あなたのたんじょう日に何かお祝いをしようと思い、今年も何も祝ってあげれず、ごめんなさい。何か、食べたいものはありませんか》
チラシの裏に、メモ帳の切れ端につづられたオカンの手書きの思いは数百枚。ラッパーのSHINGO★西成さん(51)はそのすべてを大切に保管している。
前向きに生きる大切さを、時に社会風刺を、語りかけるように歌い上げる。すべての歌詞は手書きで作る。その時々の感情やアイデアを手書きでメモする癖は、今年で92歳になったオカン・池上町子さんから引き継いだものだと思う。
家賃4100円、トラック通って揺れる家で
幼いころから、大阪市西成区のあいりん地区で暮らした。釜ケ崎の名で知られる地域の住まいは、高速道路のそば、家賃4100円の長屋だった。両親は不仲で、高速を大型トラックが通るたびに揺れる家にオトンがいることは少なかった。
口下手で、思いを言葉に出して伝えるのが苦手なオカンと一人息子。親子は少し変わった方法でコミュニケーションをとってきた。
週2回ほど、便箋(びんせん…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル