児童自立支援施設の滋賀県立「淡海(たんかい)学園」(甲賀市土山町)。3月中旬、高さ15メートルある「山びこの塔」の鐘が響いた。
学園から旅立つ子どもたちが鳴らす、「決別の幸せの鐘」。初めて一人暮らしを始めるセイジ(18)は、学園での生活を思い出しながら、揺れる鐘を見上げた。
関西出身。中学2年生だった3年前の冬、寮長の佐伯洸平さん(32)と寮母の香菜さん(41)が夫婦で住み込む甲賀寮にやってきた。
小4の時、大好きだった母が、がんで亡くなった。1歳下と5歳下の弟の面倒を見なければならなかった。下の弟は保育園児。掃除や洗濯、料理を担った。長距離トラック運転手の父親は、家を空けることが多かった。
小5ごろから生活が乱れ始めた。「何してもいいんや。バレへんやろ」。初めは軽い気持ちだった。たばこに飲酒、夜遊びを繰り返した。夜になると遊びに出かけ、朝方に弟たちの朝ご飯を作るために帰宅。それから眠りについた。
「給食を食べに」学校に行き、夕食を作って、また遊びに出かける生活。仲間とバイクに乗って暴れた。「やんちゃしている時は何も考えずに済む。ただただ楽しかったっす」
次第に弟たちの世話が面倒になった。中1のころから家出を繰り返した。補導されたり、児童相談所に一時保護されたり。親の同意もあって、淡海学園への入所が決まった。
中学2年で淡海学園にやってきたセイジ。旅立ちまでの道のりを追いました。
ちゃんと叱ってくれる大人がいた
最寄りのバス停まで徒歩約2…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル