少女たちの透明感や日常のきらめきを鮮やかに切り取ることで知られる漫画家の今日マチ子さんは、沖縄戦や原爆などを題材にした作品も数多く手掛けてきた。「政治的な話に関わるのは嫌だった」という今日さんが、少女の目を通して戦争を描く理由を聞いた。(共同通信=尾崎薫子) ―体験していない戦争を描くのはなぜか。 自分から描こうと思っていたわけではなくて、沖縄県出身の若い女性編集者に声を掛けてもらったことがきっかけです。戦争に関する作品を出したいと熱く話す姿に、すごくびっくりして。彼女を突き動かすものって何なんだろうと興味を持ちました。 それまでは政治的な話に関わることや、作家として戦争を描く人というイメージを持たれるのが嫌で渋っていました。でも、「むしろ普通の女の子のことを描いてほしい」と。それが、2010年に(沖縄戦で戦場に駆り出された)ひめゆり学徒隊が主人公の「cocoon(コクーン)」につながりました。
―心掛けたことは。 もともと戦争漫画が好きではありませんでした。子どものころに読んだ作品だと、女の子は大抵「良い子」で、かわいそうな死に方をした悲劇のヒロイン。「戦争で死んでしまった人」とひとくくりにされることに強い違和感がありました。果たしてその子はそれで良かったのか、もっと別のことを見てほしかったんじゃないか、とずっと思っていました。 学徒隊の少女たちが、重傷者が次々と運ばれてくるガマ(自然壕)の中で、ノートにきれいな洋服や甘いものを描いて空想にふけって「戦争に勝ったらデートに行く」と盛り上がる場面がありますが、これは自分の中高時代の楽しかったクラスメートとの会話からヒントを得ています。 ―読者の反応は。 この作品を読んだという小中学生から「初めて戦争のことを知って、沖縄の歴史に興味を持った」と手紙をもらうようになって、とてもうれしかったです。遠い存在だった戦争が、自分と同じような普通の子が巻き込まれた出来事だったと、身近に感じてもらえたんだと思います。
Source : 国内 – Yahoo!ニュース