「私は少女の頃に、生理が止まるという説明だけで子宮摘出手術を受けてしまいました」。旧優生保護法の下で不妊手術を強いられたのは憲法違反だとして国を訴えた訴訟で、原告となった西スミ子さん(76)=東京都日野市=が14日、法廷で訴訟を起こした思いを語った。
西さんは生後6カ月ではしかにかかり、脳性まひで手足に障害が残った。この日は車いすで、第1回口頭弁論が開かれた東京地裁を訪れ、ヘルパーに付き添われて証言台の前で意見陳述した。
「多くの被害者の道しるべに」
手術を受けたいきさつなど、1枚の紙にまとめた内容を、10分ほどかけてゆっくりと読み上げた。
大人になってから、手術で子どもを産めない体になってしまったことを知った。希望を捨てきれず、手術を受けた病院に2度足を運んだが、状況は変わらなかった。言葉を詰まらせながら、自らの体験を語り、「頭では理解しても心は到底ついていかず、苦しみをどこにぶつけたらいいのか分からなかった」と述べた。
2019年、救済法が成立して一時金320万円を受け取ったが、国から十分な謝罪を受けたとは思えなかった。
「手術は国が作った法律のもとで行われたということを認め、私の思いを受け止めて謝罪してほしい」。法廷で、語気を強めた。
「この裁判が多くの被害者の道しるべになればと思う」とも述べた。
一方、国側はこの日、請求棄却を求めた。
高裁判決に背中押され
旧優生保護法による強制不妊手術をめぐっては、これまでに控訴審を含めて7件の判決が旧法を違憲と判断している。
不法行為から20年で賠償請求権が消える「除斥期間」が壁となり、賠償までは認めない例が多いが、2~3月に大阪高裁と東京高裁が国の賠償責任を認める判決を出し、国が上告している。
西さんは、この二つの高裁判決に背中を押され、実名で顔を出して提訴することを決めた。(村上友里)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル