少女はここで美空ひばりになった 地元磯子の人々が語る気取らぬ素顔

 昭和10年代半ばごろ、横浜市磯子区に住む郷土史研究者葛城峻さん(93)は、自宅近くの魚屋「魚増」によく注文のお使いに行かされた。船乗りだった父親が長期の航海を終えて船を下りると、部下を連れて自宅で宴席を開いたからだ。

 魚を入れたてんびん棒を担いでやってきた「魚増」の大将は、たいそう男ぶりがよかった。庭先で魚をさばいて刺し身にしたり煮物を作ったりした。そのそばにいつも小さな女の子がくっついて来たのを思い出す。

 色が黒くてはな垂れ顔。家の飼い犬が女の子からもらう魚のあらでよくなつき、一緒にじゃれ合っては跳び回っていた。

 女の子は加藤和枝、のちの美空ひばり。大将は父増吉だった。少女は近所で流行歌を披露し、歌のうまさが評判になっていった。

母が頼み込んで歌った「初舞台」

 葛城さんは長年磯子に住み…

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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