伊藤良渓、西崎啓太朗
2019年にSNSで知り合った茨城県内の中学生1人と、大阪府の小学生1人を栃木県小山市の自宅に誘拐したとして、わいせつ誘拐、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの罪に問われた伊藤仁士(ひとし)被告(37)の判決が22日、水戸地裁で言い渡される。懲役24年を求刑する検察側に対し、被告側は誘拐の意図を否定し、無罪を求めている。
起訴状によると、伊藤被告は19年5月ごろ、当時茨城県内の中学校に通っていた少女を、同11月には大阪府内の小学6年の女児をそれぞれ自宅に連れ去り、女子中学生に淫行をさせたり、わいせつな画像を撮影・保存したりしていたなどとされる。2人の被害者はいずれも、SNS上で自殺願望を含む内容の投稿をしていた。伊藤被告は2人にメッセージを送り、接点を持ったという。
公判では、伊藤被告に誘拐の意図があったかどうかが大きな争点となった。
伊藤被告は被告人質問で、普段からSNSで自殺志願者の相談に乗っていたと説明。2人を自宅に連れて行った理由を「自殺を止めるためだった」と語った。弁護人も、伊藤被告が2人の行動を制限せず、行政機関への相談を促したこともあったとして、誘拐の意図はなかったと訴えた。
検察側は2人の証言などから、保護が目的だったとする伊藤被告の主張に信用性はないと主張している。
茨城県の少女は証人尋問で、伊藤被告から平手打ちされたり、「反省ノート」に「(私には)人権がない」と書かされたりしたと証言。伊藤被告について「怖くて逆らえなかった」と語った。検察側は論告で、「SNSで自殺願望がある少女を募る犯行は卑劣」と非難した。
公判では、茨城の少女の母親の陳述書を検察官が代読した。中学3年のクラス替え以降、学校に悩むようになった少女の様子を振り返り、「もっと話を聞いてあげればよかった」と悔やんだ。事件に関する少女の証言内容について「地獄のような日々を送っていた」として、伊藤被告に厳しい刑を言い渡すよう求めた。
一方、伊藤被告は最終陳述で、「親に虐待され、学校でも捨てられた少女を助けようと、できる限りのことをした」と改めて無罪を求めた。(伊藤良渓、西崎啓太朗)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル