就労許されず移動制限も 仮放免の苦境訴えるクルド人

 塀のない刑務所で生活しているみたい――。

 仮放免者として計約18年間、日本で生活するクルド人のアリ・アイユルディズさん(45)は、現在の生活をこう表現する。1993年、トルコ軍に徴兵された後、同胞と闘うことを拒否して来日。2009年に日本人女性と結婚したが、在留資格は得られていない。

 現在、千葉県野田市で会社員の妻と暮らす。就労を許されていないため、平日は家で妻の帰りを待つ。工事現場で働いていた経験から、重機を扱う免許も持っている。「働きたいのに、働けない」と訴える。

 移動の自由も制限されている。親戚が埼玉県に住んでいるが、野田と埼玉を結ぶ橋は渡ることができない。「私にとっては、日本にもベルリンの壁がある」

 今年6月、在留資格を求めて起こした東京地裁での裁判で敗訴。友人のクルド人がトルコで逮捕されたり、殺害されていることから、帰国はできないと訴えたが認められず、「帰国したとしても日本人の妻とは電話、メールなどで交流が可能」などとして、請求を棄却された。現在控訴しているが、「裁判は負けると思う」と話す。

 茨城県牛久市の東日本入国管理センター(牛久入管)に収容中の外国人らを支援する「牛久入管収容所問題を考える会」が13日、つくば市で年間活動報告会を開催した。アリさんを含む約100人が出席し、アリさんも仮放免生活の苦しさを訴えた。茨城キリスト教大非常勤講師の呉泰成さんは「仮放免者は就労できず、健康保険も加入できない。無権利状態」と指摘した。

 被収容者を一時的に解放する仮放免は、入管施設内の新型コロナウイルス感染拡大を防止するため、今年に入ってから増加している。同会によると、約300人が牛久入管に収容されていたが、今年度から、そのうち約230人が仮放免となったという。

 一方で、長期収容されている人には仮放免の許可が出ていない。11月、収容所の医務室内で汚物をまき散らしたとして逮捕、起訴された男性から、同会に寄せられた手紙も紹介された。「4年4カ月ここに閉じ込められ、精神的にも肉体的にも色々追い詰められて、毎日辛いです。(中略)ここで収容されている難民達がどんなに酷い目にあっても虐待されていることもどうにもならないのです」

 同会によれば、長期収容者には、先の見えない収容生活から摂食障害などを抱えるなど、体調を崩す人が多いという。

 9月、国連恣意(しい)的拘禁…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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