尾張徳川家ゆかりの古刹(こさつ)、定光(じょうこう)寺(愛知県瀬戸市)の前住職(75)と息子の前副住職(46)が檀家(だんか)らから受け取ったお布施など計1億1千万円を帳簿に記載せず私的に使い果たしたとして、寺を運営する宗教法人定光寺が名古屋国税局から所得税の源泉徴収漏れを指摘されたことが分かった。追徴課税は重加算税などを含めて約4千万円。寺は大半を納付した。
定光寺は国定公園内にあり、17年に私有林の違法開発が発覚。所属する臨済宗妙心寺派(京都市)が前住職を退職させる剝職(はくしょく)処分にし、前副住職も退職した。現在の住職側が2人に損害賠償を求める訴訟を起こす予定という。
関係者によると、国税局は昨年11月、税務調査を実施。2017年までの約4年間に檀家らから受け取った107件の戒名料など計7780万円と志納金60万円が寺の帳簿に記載されず、寺名義の預金から引き出した750万円も記載がないことが判明。計8590万円は、前副住職が私的に使い果たしたと判断した。
また、寺が帳簿上、複数の清掃員に支払ったとする2240万円は「架空の給与」と認定。帳簿に記載がなかった寺運営の霊園供養料230万円とともに、前住職が私的流用したと判断した。
国税局は前住職と前副住職が個人的に使ったと認定した計1億1千万円は、課税対象の「給与」とみなした。支出を帳簿に記載しなかったことなどが仮装(かそう)・隠蔽(いんぺい)行為にあたると判断したとみられる。
前住職は取材に対し、「息子(前副住職)が始めた葬儀会社の有利子負債の返済のため寺の収入を薄くした。限界集落のようなところにある寺は葬儀会社などをつくり、外へ出ることを意識しないとやっていけない」と説明。指摘された「架空の給与」について「払ったのは事実だが、記録が残っておらず認めてもらえなかった」と話した。
前副住職は09年に葬儀会社を設立、17年まで社長を務めた。今回、取材の申し込みには応じなかった。
源泉徴収は、法人や個人が従業員らに給与や報酬などを支払う際、その金額に応じた所得税を差し引く制度。差し引いた分は原則として、期日までに国に納める義務がある。期限までに納付されない場合は延滞税や不納付加算税の対象となる。
定光寺は南北朝時代の1336年の創建とされる。室町時代に建てられた本堂と、本堂の奥にある尾張藩祖・徳川義直の廟所(びょうしょ)は国指定の重要文化財。春は桜、秋は紅葉の名所として知られる。(村上潤治、小若理恵)
後を絶たない資金流用
宗教法人は、お布施など宗教活動にあたる非収益事業の収入は税金がかからない。公益性の観点から税制面で優遇されているにもかかわらず、住職らによる資金流用で源泉徴収漏れを指摘されるケースが後を絶たない。
国税庁は2019年11月、同…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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