届ける、おむつも安心も 「見守り定期便」で孤立や虐待防止へ

 大阪府富田林市は1月から、0歳児がいる世帯におむつなどを届け、その際に保護者に悩みや困りごとを聞く「見守りおむつ定期便」を始めた。きっかけは、市内で起きた2歳児の熱中症死亡事件。「見守り配達員」が訪問時に悩みや困りごとも聞くことで、不安解消や孤立防止、虐待防止などにつなげるのが狙いだ。

 定期便は9日から始まった。市内に住む高宮紗世さん(32)は早速おむつを受け取った。生後9カ月になる長女・佳純さんの子育て真っ最中で、高宮さんは「定期的に届けてもらい、相談も聞いてもらえるのは助かる。初めての子育てで、先輩の方の経験も聞け、参考になる」。

 谷口香織さん(37)は、三女・瑠夏ちゃんがおむつ定期便の対象だ。生まれて6カ月。ほかに7歳、4歳の子がいる。谷口さんは「家にいると大人としゃべることが少なく、雑談ができるだけでもありがたい」と話した。

 対象となる0歳児は、誕生日の翌々月から1歳の誕生月まで。毎月1500円相当のおむつなどを、市から委託を受けた大阪いずみ市民生協の「見守り配達員」の職員が対面で届ける。1月は343世帯に配達する予定。

 配達員は4人。子育て経験があり、市の子育て施策や、保護者にどのように接するかなどの研修を受けている。担当する地区が決まっていて、「育児の悩みや困りごとを気軽に話せる関係」をめざす。訪問時に気付いたことなどはタブレットで記録。月に1度は市の担当者と集まって情報交換し、必要と判断した場合は支援につなげる。

 おむつ定期便は、兵庫県明石市が2020年から実施している。市によると、生後3カ月から満1歳の誕生月まで、毎月約2200世帯に約3千円分のおむつなどを対面で渡している。対象のほぼすべての世帯に利用してもらっているという。福岡市も昨年8月から、0歳から3歳の誕生月までの子どもがいる世帯を対象に、「おむつと安心定期便」を始めた。

 富田林市では、年間で約600人の子どもが生まれる。市は、出生届けの提出などの際に定期便について知らせるほか、対象となる世帯に案内を送る。吉村善美市長は「乳児を育てる家庭の不安や心配に寄り添い、支援したい」と話している。(前田智)

     ◇

 〈富田林市の2歳児熱中症死事件〉2022年6月、富田林市内の団地で、当時2歳の女児が熱中症で亡くなり、祖母と、内縁関係だった男が逮捕された。事件では、女児の手足を粘着テープで縛り、ベビーサークル内に放置していたことや、この間にユニバーサル・スタジオ・ジャパンを訪れていたことなどがわかった。2人は保護責任者遺棄致死と逮捕監禁の罪で起訴され、男は昨年12月に一審で懲役6年の判決を受け控訴。祖母の公判は1月30日から始まる。

Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

Japonologie:
Leave a Comment