浅田朋範
奈良県警は14日、天川村の弥山(みせん、895メートル)に入山し、5日から連絡が取れず遭難していた名古屋市の女性(61)と愛知県一宮市の女性(69)を救助したと発表した。2人は擦り傷程度で、命に別条はないという。2人はわずかな食料や沢の水をたよりに10日間を山中で過ごしていた。
吉野署などによると、2人は1泊2日の予定で、同村に登山届を提出。4日の正午ごろ弥山に入山し、天川村北角の弥山小屋に宿泊。5日午前8時ごろに山小屋を出発し、同日夜に同村内の民宿に宿泊予定だった。だが、夜になっても到着せず、民宿の経営者が警察に通報。県警や消防は6~10日に捜索したが、発見できず捜索を打ち切った。
13日午後6時半ごろ、1人の携帯電話から「山の尾根にいる」と110番通報があり、県警はGPSで居場所を特定。14日早朝から捜索を再開した。午前6時半ごろに天川村役場から南に約6キロの地点で1人を発見し、県の防災ヘリで救助した。約3時間後にその近くを捜索した警察官らがもう1人を発見し、ヘリで救助した。
取材に応じた名古屋市の女性によると、2人は山小屋を出発後、下山途中に霧が立ちこめる中、道を見失った。2人は山中で見つけた屋根のある場所で火をたいて助けを待った。沢の水で水分補給をし、持っていたビスケットやチョコレートなどを少しずつ食べた。
食料が少なくなり、女性は13日午前6時半ごろから、スマートフォンの地図やコンパスを頼りに、天川村役場のある北方向へと歩き始めた。もう1人は体力を消耗していたことなどからとどまった。女性は同日午後6時半ごろ、電波が届く場所にたどり着き、110番通報。バッテリー残量は20%だったという。
女性は「たくさんの人に迷惑をかけて申し訳ない」と話し、「途中で引き返す勇気を持てたらよかった」と振り返った。(浅田朋範)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル