中山直樹
山口大学医学部の女性講師が上司の教授からアカデミックハラスメント(大学などでのパワハラ)を受け、大学にもアカハラを否定されたため、うつ病を発症したとして、労働基準監督署が労災を認定していたことがわかった。女性は、大学と教授に対して計330万円の損害賠償を求め、山口地裁に提訴した。
提訴は28日付。女性は研究室で教授と准教授に次ぐ立場にある。2020年ごろから不眠などになり、21年6月にうつ病と診断されたという。
労基署の今年3月の調査報告書によると、女性は18年から60代男性教授に「講師のレベルでない」「英語が貧弱」と叱責(しっせき)されたり、無断で私物を廊下に出されたりしたなどと訴えていた。労基署は女性から提出された音声データなどを基に「教授がミーティングで女性の発表を再三妨げるなど、同僚の面前で攻撃的な発言があった」「業務の目的を逸脱した精神的攻撃が複数回あった」と、教授のパワハラを認定した。
女性の申し立てを受けた同大のハラスメント防止・対策委員会が女性へのハラスメントを認めなかった点も指摘。「支援が十分と言えず、女性の状況は改善されなかった」とした。
労基署は、教授のパワハラと、教授のパワハラ発言が相談後も繰り返されるという大学の不適切な対応の結果、女性がうつ病を発症したと認定した。
労災認定を受けて、大学はハラスメントはないとした判断について「妥当性については、ハラスメント防止・対策委員会でしか判断できない」とコメントした。
女性の代理人でハラスメントの問題に詳しい西野裕貴弁護士は「大学の研究室は、教授の力が強く閉鎖的で、ハラスメントが起きやすい。大学側の調査は、アカハラ判断に必須である教授の聞き取りさえしておらず不十分だ。被害者に寄り添わない姿勢は問題を助長している」と指摘する。(中山直樹)
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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