岸田文雄首相が「LGBT理解増進法案」の提出に前向きな姿勢を示している。性的少数者や同性婚をめぐり、首相秘書官が発した「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」といった趣旨の発言が問題視されたなかで急浮上した。その発言を非難した首相自身も同性婚の法制化について「社会が変わってしまう」と答弁。こうした言葉を、当事者はどう受け止めているのか。地方議員らとのオンライン討論開催など性的少数者(LGBTQ+)や同性婚への理解を進めるために活動してきたことが評価され、昨年の「ミスター・ゲイ・ジャパン」のコンテストでグランプリに選ばれた田中愛生(あいき)さん(33)=山口市=に聞いた。
国のモラル問われる 傷つく一方で「慣れ」も
――首相秘書官だった荒井勝喜氏は性的少数者や同性婚をめぐり、「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」「見るのも嫌だ」「認めたら国を捨てる人が出てくる」という趣旨の発言を官邸で記者団にしたとされます
発言の翌日にツイッターで知りました。やっぱり傷つきますし、社会全体が自分たちを嫌っているんじゃないかという思いに陥ってしまいます。自殺を考えてしまうという内容のツイートをした人もいました。
一方、国のトップの人たちが自分たちをないがしろにするような発言が繰り返されることに、残念な意味で慣れてしまった自分がいる。心の平穏を保つために、慣れないといけなくなっているんです。
――岸田首相は「社会が変わってしまう課題だからこそ、社会全体の雰囲気にしっかり思いをめぐらせたうえで判断することが大事だ」と述べました
2021年3月の朝日新聞の電話世論調査では、同性婚を法律で「認めるべきだ」と答えたのは65%で、「認めるべきではない」の22%を大きく上回った。東京都渋谷区とNPO法人「虹色ダイバーシティ」の調査では、性的少数者のカップル関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」を導入した自治体の人口カバー率は、23年1月時点で65・2%となっている。
世の中が「オッケー」な雰囲気になってきているのに前進しないのは、そもそも首相が社会に思いをめぐらせていないからではないかと感じてしまいます。今回の発言で世界各国から、国としてのモラルが問われる事態になっていることを自覚するべきだと思います。
――LGBT理解増進法案の提出が検討されていますが、「差別は許されない」という文言を入れることに対して「差別禁止という言い方によって社会が分断される」などと一部に反対意見があります
差別禁止法や同性婚を認める法律がある国でも、すべての人に同性愛への理解があるわけではありませんが、分断は起きていないと思います。
「分断が起きる」ということは、世の中に差別発言をしかねない人たちが元々いて、禁止になるとその人たちが排除されてしまうと思っているのでしょうか。
(そういう人が)いることを前提にするなら、なおさら差別への対応が必要と考えるべきです。理解増進法にとどまらず、差別禁止法の制定までしてもらいたいです。
「隣に住んでいるのも嫌」と言う荒井氏の発言は、まさに差別的でした。学校でも「いるだけで気持ち悪い」とか「隣に来るなよ」といった、いじめがありますよね。誰かを気に入らないっていうのは仕方ないことですが、それを「あいつ、見るのも嫌だ」と口に出せば、いじめになってしまう。
そこは線引きして、言っていいことかどうか考える必要がある。子どもですらわかることです。
「結婚しようと思う」に衝撃
――田中さんは昨年8月の「ミスター・ゲイ・ジャパン」でグランプリになりました
ベトナムであった性的マイノリ…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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