鹿児島県十島村の有人7島で4月下旬、フェリーの定期航路を組み替え、3泊4日の日程で島民にワクチンの集団接種をする。そんな「前例の無い計画」に同行取材した。
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26日午後11時に鹿児島港を出港した。台風2号のうねりが残り、フェリーは揺れに揺れた。翌27日早朝に最初の寄港地・悪石(あくせき)島にワクチンを搬出する際、カメラを回すテレビ局の記者には船酔いで顔面蒼白(そうはく)になっていた人も。感染拡大防止のため船外での行動は制限され、3泊とも船中泊というなかなかの苦行だった。
そんな中、派遣された医師や看護師、保健師、十島村職員は、接種会場の設営や段取りの確認、島民の誘導など忙しく動き回った。2月から準備を始めた保健師は、ほぼ無休で働きづめだった。「無医島」で感染者を出さない、出たとしても重症化させないというスタッフの「熱量」は取材する記者たちにも伝わった。
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初日の接種を終えた27日夜、翌日の取材予定を確認していた自分のところに村の担当課長が「お願いがある」とやってきた。
「医師や看護師がクローズアップされるが、準備を積み上げてきた保健師がいたから接種がスムーズに運んだ。保健師の努力に光を当ててくれないか」
各社の記者に根回しし、保健師の囲み取材を設定。カメラの前で緊張しながら取材に応じる保健師を見て、心が温かくなった。ワクチンの供給遅れや効果への疑念、接種をめぐるトラブルなど国や自治体の対応に課題は多々あるが、島民の「命と健康」を守るために必死に働く人々に敬意を抱いた同行取材だった。(白石昌幸)
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コロナ禍は、離島の暮らしも直撃しました。厳しい医療提供体制、失われたにぎわい……。島の人たちはいま、何を思うのでしょうか。
島唯一の医療機関が語る現状
新型コロナウイルスから島民の命を守る集団接種が、4月27~28日に鹿児島県内の離島・十島(としま)村の有人7島で行われた。島をめぐる医療チームに同行した。
27日午前9時40分過ぎ。「フェリーとしま2」が諏訪之瀬(すわのせ)島に接岸した。
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周囲約27キロのこの島には85人の島民が暮らす。村の中で2番目に大きな島。御岳(おたけ)(799メートル)はいまも火山活動が続く。春には群生するマルバサツキがピンク色の花を一面に咲かせる美しい島だ。
接種会場は島の小中学校体育館。赤ちゃん連れの夫婦や民宿の経営者ら49人が接種を受けに集まった。検温や予診票のチェックを受け、来島した医師の待つブース前で呼び込まれるのを待つ。医師が「しびれは無いですか」などと声をかけながら、1人あたり1分足らずで接種が終了。島民は副反応の経過観察を経て、自宅に戻っていった。
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島唯一の医療機関は「諏訪之瀬島へき地診療所」。出発前、診療所の勤務歴15年の伊東千香子看護師長(48)にテレビ会議システムで話を聞いた。
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「昨年4月、夕方4時過ぎだったと思います。診療所に『高熱が出た』という電話が入りました。『どうしよう』と思ったのを覚えています」
「心からホッとしました」
高熱を出したのは県外から訪…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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