川崎市麻生区の自宅で長男(当時37)を拘束して放置し死なせたとして、逮捕監禁と保護責任者遺棄致死の罪に問われた横山直樹被告(71)に対する裁判員裁判の判決公判が28日、横浜地裁であった。足立勉裁判長は逮捕監禁罪について、懲役3年執行猶予5年(求刑懲役6年)を言い渡した。保護責任者遺棄致死罪は無罪とした。
判決によると、長男の雄一郎さんは2004年ごろから自宅にひきこもり、11年ごろから奇声を上げ、壁を壊し、暴力を振るうようになり、統合失調症の疑いがあると指摘を受けた。13年ごろから被告が一人で世話を担い、16年ごろからは長男が浴室や廊下に大小便を垂れ流すように。21年5月、長男が全裸のまま外に出て警察官が出動する騒ぎとなったことを機に、その両手足を手錠や足錠などで拘束し、自宅に監禁。長男は同年8月に脳出血で寝たきり状態になり、同年9月6日ごろ、床ずれ部分からの感染症が原因で死亡した。
14日の初公判で、被告は逮捕監禁罪は認めたが、「医師の診断が必要な状況だと思っていなかった」と保護責任者遺棄致死罪は否認した。検察側は20日の論告で「世間体を気にして場当たり的な対応をした」などとして、両罪で懲役6年を求刑。弁護側は長男との意思疎通が困難で、体調の変化に気づけなかったなどとして、執行猶予付き判決を求めていた。
判決は、被告には長男が寝たきりとの認識がなく、体調の異常の訴えはなかったとする被告の供述を踏まえると、床ずれの進行を認識するのは困難だったなどとして、保護責任者遺棄致死罪は無罪とした。
一方で、逮捕監禁罪については約4カ月に及び、そのやり方も「明らかにやりすぎだ」とし、「医療機関や保健所に相談して公的支援を受ける機会は幾度もあった」と指摘した。ただ、「約10年もの長きにわたり、異常な言動を繰り返す長男への対応に明け暮れ、精神的に追い詰められた」として、執行猶予付きの判決を言い渡した。
裁判員を務めた女性は判決後の記者会見で、「被告に同情する部分もあった。もっと行政に相談もできたかなと思う」。別の裁判員は「自分で何でも決める一家の大黒柱の影響があったのでは」と述べた。
一部無罪の判決を受け、横浜地検の塩沢健一次席検事は「判決内容を精査し、適切に対応したい」とコメントした。(手代木慶、原晟也、中村英一郎)
「家族以外と接点を」
精神疾患の経験者は、事件をどう見たのか。
「ひきこもった時点で家の中…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
Leave a Comment