愛知県豊橋市の木工会社が、能登半島地震で屋台を失った「輪島朝市」に組み立て式の屋台を無償で貸し出す。かつて、コロナ禍に飲食店主が屋外販売できるよう豊橋技術科学大の学生らと開発した木造の屋台で、工具を使わず約5分で組み立てられる。23日に金沢市で開かれる「出張輪島朝市」でさっそく活用される予定だ。
「輪島朝市」に屋台を貸し出すのは、豊橋市で特注家具の製造販売などをしている「老津木工」。社員10人の有限会社で、2021年5月から「組立式ヤタイPatto(パッと)」の商品名で販売を始めた。東三河地域のスギの間伐材が一部使われていて、重さは計約25キロ。コンパクトに収納でき、運搬や組み立ても容易だという。1台6万9800円(税込み)で、これまでに300台以上の販売実績がある。
1月末、出張輪島朝市での再出発への取り組みをテレビニュースで知った松井誠社長(44)は、軽自動車でも運べる自社の屋台で「手助けできるのでは」と旧知の辛島一樹・前橋工科大准教授(39)を通じて、輪島市朝市組合にメールで支援を申し出た。
辛島准教授は防災のまちづくり計画が専門で、豊橋技科大助教として屋台の共同開発にも関わっていた。
その後、朝市組合の一員で、「輪島朝市を応援する会」の発起人の女性から、「とても素敵なご提案をありがとうございます」と返信が届いた。3月に金沢市で出張朝市を開く予定で、そこで使えるか見てみたいという要望が添えられていた。
想定3倍超の貸し出し要請だけど…社長「うちしか出来ない」
2月に松井社長と辛島准教授が金沢市の金石港を訪れ、車で持ち込んだ屋台を実際に組み立ててみせた。わずか5分ほどで完成すると、「応援する会」側から「使いやすいし、組み立てやすい」という評価を得た。
輪島朝市では、高齢の組合員が多く、屋台の組み立てや片付けにはそれぞれ30分ほど掛かっていたという。
組み立て式屋台14台の貸し出し要請を受けた松井社長ら。当初は4台貸し出すつもりだったが、「できることはやってあげたい」と要請通りに支援を決めた。まずは屋台10台を貸し出し、8月までにはさらに4台を追加で貸し出す予定だ。
松井社長は「うちしか出来ない支援だと思った。この屋台をきっかけに、復興の第一歩にして欲しい」と話す。
辛島准教授は「被災後から復興に向けての市街地整備には時間が掛かる。その間、今回のようにいろんな場所や形態で物品販売を行える機会が発生する際の場づくりとして活用いただければ」とコメントした。
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル