無料の粗品につられて参加した集まりで、熱気に押されて高額商品の契約を結ばされる。「催眠商法(SF商法)」や「ハイハイ学校」などと呼ばれる販売方法についての相談が、今年度に入り熊本市の消費者センターに多く寄せられている。「安易に会場に近付かず、勧誘されてもその場ですぐに契約しないように」と注意を呼びかけている。
催眠商法は以前からある販売方法だが、市消費センターに昨年度は4件しかなかった相談が、今年度は5月23日の時点で5件が寄せられたという。
相談は例えば次のような内容だ。
「近々店を出すので、宣伝で回っています」。団地に戸別訪問してきた業者に誘われ、団地横の通路にほかの住民と集まるとティッシュなどが無料で配られた。そこで「ここに午後1時に集まってください」と書かれた紙を渡され、その時間に足を運ぶと団地内の一室に案内された。
健康にまつわる話の合間に靴下などが無料で大量に配られて熱中した。最後に30万円弱の敷きマットが出てきて「病気が治る」「本日は特別に値引きする」と売り込まれ、26万円で契約してしまった……。
こうした商法では、閉め切った部屋に大勢を集めて、販売員が巧みな話術で盛り上げる。無料や格安で日用品を配る際などに「はい」「はい」と何度も参加者に手を挙げさせたり、声を出させたりする。高揚した雰囲気をつくって冷静な判断力を奪うのだ。
業者は短期間で販売する地域を変えて、あちこちで高額商品を売り歩く。被害に遭うのはほとんどが高齢者だが「参加して楽しかった」という印象が残り、被害が表面化しにくい。市消費者センターへの相談は、高額商品を売られた高齢者の家族や友人からという。
市消費者センターは「無料の商品などの誘いに乗って、安易に会場に近づかないように」「商品購入の契約を結んだ。クーリングオフをしたいなどの悩みがあれば、相談を」と呼びかけている。
相談は専用電話(096・353・2500)で平日午前9時~午後5時に受け付けている。(吉田啓)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル