差し障りあることも笑いに オレンジジャージの男の覚悟

 コロナ禍で政治、社会の閉塞(へいそく)状況があらわになり、政治的な発言を避けてきたタレントもオンラインデモに参加するなど、政治にモノ言う市民が増えているようです。忖度(そんたく)やタブーなく、風刺を織り交ぜて森羅万象を笑いに変換してきたスタンダップコメディアン清水宏さん(54)が、コロナ後に向けた新たな挑戦を始めています。

しみず・ひろし 1966年生まれ。小劇団俳優出身のスタンダップコメディアン。2015年、カナダ・ウィニペグ・フリンジ・フェスティバルで最優秀外国人賞。16年、ぜんじろうさんらと日本スタンダップコメディ協会を設立し、会長。

――新型コロナウイルスの感染拡大で、会長を務める「日本スタンダップコメディ協会」(副会長・ぜんじろう、会員・ラサール石井、インコさん)主催の今年4月1日の本公演(東京・紀伊国屋ホール)が中止になりました。

 マイク1本で舞台に立ち、笑いの中に社会風刺を織り交ぜ、客席に突きつける。忖度やゴマカシをぶっ飛ばす話芸がスタンダップコメディです。

 ライブができなくなったために、もう、いても立ってもおられず、SNSや動画配信を始めました。とにかく多くの人にスタンダップコメディを知っていただきたいと思いツイッターなどで発信しています。ぜんじろう、ラサール石井は、どんどん皆さんに名前が広がっています。あとは僕だなと思い(笑)、YouTubeのチャンネル「清水宏の屋根裏のオレンジ」を始めました。

覚悟が問われている

――コロナで、スタンダップコメディも変わるのでしょうか。

拡大する一人芝居の最終リハーサルに臨む清水宏さん=2020年6月3日、東京・下北沢の本多劇場、角野貴之撮影

 コロナ禍で世の中が変わろうとしている今、自分の主張をきっちり持って政治やメディアにも笑いで切り込む覚悟が問われていると思います。コロナのせいでスタンダップコメディへの覚悟をとらえ直すというのはしゃくだけれど、我々演者の目指していることが数段鋭く、高くなっていないと。「今は生活がたいへんだから行かれないけれど、スタンダップコメディの姿勢には共感する。自分の事情が良くなったら、ライブに行くね」って、お客さんに思ってもらいたい。見にきてほしい。たくさんの人に見てほしいです。

――政府や自治体の自粛、休業要請で人々の暮らしが苦しくなる中、1人10万円の特別定額給付金や「アベノマスク」の給付、配布は遅れました。その最中に、検察幹部の定年延長を政府の判断で可能とする検察庁法改正を急いだ政府・与党に対して、オンラインデモ「#検察庁法改正案に抗議します」が盛り上がりました。

 コロナで仕事も遊びも満足にできず、きゅうきゅう、鬱々(うつうつ)として何かを求めている人々。どこの街にもいる、そんな人々を元気にするメディアって何だろうって、この間ずっと考えていたんです。「テレビには、自分の居場所がないかもしれない」と思う人たちに、スタンダップコメディがあるんだよって、一刻も早く知ってもらいたい。(オンラインデモ参加者のツイートは)何百万もありました。これまでの報道やメディアのあり方に疑問や飽きたらない思いを持っている人がたくさんいる。そうした人々に振り向いてもらわなければなりません。その役割を担っていきたい。

 一方、コロナ後にふさわしい新…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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