差別おそれず顔出しでテレビ出演 孤独な僕も支えた松ちゃん

 2008年のリーマン・ショックの影響で、派遣切り雇い止めで路上に投げ出される人々が街にあふれた。小倉でも、20代の男性のホームレスが現れた。僕らのNPO法人は直ちに北九州市と協議してシェルターを6室確保し、国が進める困窮者支援のためのパイロット事業も福岡で引き受けた。

NPO法人「抱樸」理事長 奥田知志さん

 この時期、NHK番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」の取材班が僕に密着していた。担当ディレクターの女性は、器物損壊の現行犯で逮捕された松ちゃんを拘置所に訪ねて、取材の了承を得た上、面会に通って彼を支える「チーム松井」のメンバーに加わった。こうして松ちゃんにも出所した日から数日間、カメラが向けられた。

 1カ月以上の取材を編集した番組は09年3月に放送された。画面にモザイクをかけた元ホームレス数人が映る中、松ちゃんだけが本名と顔出しで登場した。初めて出てきたのは拘置所前のシーン。服役した人、つまり“前科者”であることが一目瞭然だった。僕はドキドキしながら番組を見続けた。

 現在でもホームレスへの厳し…

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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル

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