架空の被差別部落を舞台に、幼い兄弟らがいわれのない差別に立ち向かいながら成長していく姿を描いた小説『橋のない川』。作家・住井すゑが1960年代初頭から30年余をかけて書き続けた全7部の大著は累計440万部を刊行した。コロナ禍で新たな差別が生み出される現在。文芸評論家・斎藤美奈子さんは特に若者に読書を勧めている。
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茨城県南部。牛久沼は小貝川の堆積(たいせき)物に支流がせき止められてできたという。霞ケ浦に似たY字形をしているが、面積はずっと小さい。そのほとりの高台の家で、住井すゑ(え)(1902~97)は30年余にわたって小説『橋のない川』を書き続けた。
明治末から大正にかけて奈良県・葛城(かつらぎ)川沿いの架空の被差別部落を舞台に、畑中誠太郎・孝二兄弟を中心とする人々がいわれのない差別に立ち向かう姿を描く。第7部まで書かれ、版元の新潮社によれば単行本と文庫本合わせて累計440万部が刊行された。
勢いのある文字、筆が走るとはこのことか
一昨年、作者の旧宅が遺族から地元の牛久市に寄贈された。その土地・建物に来年度、「住井すゑ文学館」(仮称)を開設するための整備事業が進んでいる。
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その過程で約2800枚の入稿済み原稿や、約1600枚の草稿などが新たに見つかった。事業を担当する市教委文化芸術課の飛鳥川みつき主任(39)は「原稿や草稿の文字にはさらさらと勢いがあり、筆が走るとはまさにこのことかと思いました」と話す。
戦前から童話や農村に題材をと…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル
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